仏なだけではNG「正して導く」

今回の調査でも、前述のように叱る行為は減っているが、だからといって褒める行為を目にする頻度が大幅に増えているわけでもなかった。厳しい指導のもとで育ってきた上司が、社会情勢の変化の中で叱ることに及び腰になっているが、だからといって褒め方もわからないと戸惑っている様子が目に浮かぶようだ。

「僕はリーダーとして成功する条件の1つが、“人を心から褒めることができるかどうか”だと常々言っています。上司の仕事は部下の長所を引き出してチームとして結果を出すこと。そのためには、まずその人の長所を見つけ出さなくてはいけません。そしていいところは素直に褒める。褒めると言っても、『おだてる』とは違います。おだてるというのは、美点でもなんでもないところを持ち上げること。褒めるというのは、本当にいいところを見つけて相手に伝えることです」(小宮氏)

今回の調査では「好きな上司のタイプは?」という設問で「鬼タイプ」と「仏タイプ」の2択で選んでもらった。結果は、90.0%の人が「仏タイプ」を選択。まさに「好きな上司は仏が9割」というべき状況だが、やはり今の時代は叱るよりも褒めるべき、ということだろうか。

「それは違います。叱るときの言葉やシチュエーションには注意が必要ですが、部下が本当に間違っているときにはきちんと指摘しないと、信頼されません。長年培った知識と経験に基づいて部下を正しく導くことが、部下からの信頼と尊敬を得る一番の方法なのです」(片田氏)

片田氏は上司として大事にするべき事柄として以下の3つを挙げる。

「1つは、部下を信頼して仕事を任せること。細かいことまでいちいち指図して、小さな失敗も許さないような上司では部下から煙たがられます。2つ目は、いざとなったら最終的な責任は自分がとるという姿勢を打ち出すこと。最後は『間違っているときは正す』こと。ただ仏であればいいのではなく、言うべきときには言わなければなりません」

女性部下は、上司を厳しく査定

「『話を素直に聞く気になる上司』の特徴」という設問では、「人間として尊敬・信頼できる」が男女共にトップで、次に「いざとなったら責任をとってくれる」が続いた。まさに片田氏の指摘通りである。

特に女性は「ふだんから部下の状況を把握・理解してくれている」「きちんと褒めてくれる」なども60%以上と男性より際立って高かった。「きちんと叱ってくれる」も45%を超えている。