上司のちょっとした一言が、部下のやる気を大きく左右する――。部下のポテンシャルを最大に引き出せる“言葉力”に富む上司の特徴とは?

職場の叱る環境が、この10年で激変

現代は、“上司受難の時代”と言えるかもしれない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/maroke)

「最近は、パワハラやセクハラで訴えられないかとビクビクしながら部下と接している上司が非常に多い」

こう話すのは、精神科医で『「上司」という病』などビジネスパーソンの心理に関する著書が多い片田珠美氏だ。

今回、全国のビジネスパーソン1000人に対し、「職場の声かけ」というテーマでアンケート調査を実施した(2018年12月)。その中の「職場で上司が部下を叱る行為を目にする頻度は」という設問では、「頻度が減っている」が58.8%だったが、同様の質問を10年(プレジデント2010年9月13日号)に行ったときは「頻度が減っている」は25.0%にすぎなかった。この8年ほどで「上司が部下を叱る」ということ自体が大きく減少していることが見て取れる。

「今の50代以上の男性会社員の多くは、上の人間から頭ごなしに叱られて育ってきました。でも、今自分たちが同じことをやればパワハラだと言われかねない。そのため、部下とどうコミュニケーションを取ったらいいかわからない。ある意味、不遇な世代かもしれませんが、昔の罵倒型の指導が正しいわけでもないので、こればかりは上司も勉強して時代に適合していくしかないと思います。今でも体育会系の部活などで先輩から後輩への暴力や理不尽なしごきなどが問題になることがありますが、嫌なことをされた人がさらに下の立場の人間に対して同じことを繰り返し、連鎖が続いていく。今の上司には、実は内心では部下を厳しく叱りつけたいと思いながら、その気持ちを抑えつけている人が少なくないはず。だからこそ、これだけハラスメントが問題になっても完全にはなくならないのです」(片田氏)

現代の上司にはこうした“不遇”があることには同情の余地があるかもしれないが、「そこは訓練で変わるしかない」と語るのは、経営コンサルタントの小宮一慶氏だ。

「厳しいことを言うようですが、自分たちも理不尽な環境で仕事をしてきたから、部下にも同様に接するというのはレベルが低い話。リーダーは部下に対して上手に叱り、そして褒める必要があります。しかし、今の管理職は叱ることも褒めることもできない傾向があります」