「ゲーム脳」が天才たちを生み出した
1986~87年生まれのポケモン世代と、極めて親和性が高いのが、80年生まれである。代表格は、スマートフォンアプリの『CASH』やカーシェアリングサービスの『CaFoRe」を立ち上げて、次々と売却した光本勇介氏であり、彼は『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といった名作RPGが競って新作を出していた時代に、9~11歳を迎えている。
これらの初期RPGは、ポケモンを始めとしたその後のゲームに大きな影響を与えており、「多様性を認める」「絶えず進化を図る」、あるいは「目的に向かって、違う個性を持った人たちがチームになって助け合う」という世界観はまったく同じだ。
だからポケモン世代と、ちょっと上のドラクエ世代がタッグを組むと、非常に強力になる。日本クラウドキャピタルの大浦学氏のもとには、ドラクエ世代の経営幹部がついているし、また仮想通貨取引所として急成長したコインチェック(現在は、マネックス証券の子会社)の経営陣も、ポケモン世代とドラクエ世代の2人組だった。
こうした若手経営者による企業の強さは、ゲームそのものによって築かれたといっても過言ではないと、私は考える。しかし、これまで誰も、ゲームに没頭する経験が、ビジネス競争優位性の鍵になるなんて、ウルトラマン世代には考えられなかった。
2002年に、『ゲーム脳の恐怖』(NHK出版)という本が出たのを覚えているだろうか。同書によれば「ゲームをやりすぎると、『ゲーム脳』になる。頭の働きが低下し、痴ほう症と同じ状態になってしまう」ということで、大きな反響を呼んだ。これを機に、親子の間で1日のゲーム時間を何時間に制限するか、激しいやり取りがあった家庭もあるのではないだろうか。
この本の刊行から十数年が経った。そこで振り返ってみてわかったのが、ゲームをやっていた子は、痴ほうになるどころか、天才になってしまった、ということだ。
彼らは、視覚情報の処理能力が非常に高い。RPG世代の経営者たちが猛烈なスピードで事業を立ち上げ軌道に乗せていく姿は、まさにゲームプレイそのもの。AI化が進む現状にも順応しやすいのは、もちろん、間違いない。