80年代生まれの価値観を形成したのはゲーム

さらに1980年代生まれの経営者たちを特長づけるのは、「民主化」「機会平等」「ダイバーシティ(多様性)」といったキーワードで表現される世界観である。今までのビジネスでは当然だった「競争優位」「市場シェア」「市場規模」といった言葉は、彼らの口からほとんど出てこない。こうした共通の価値観は、何によって培われたのだろう?

「ゆとり世代だから……」このようなイメージを浮かべる人が多いかもしれないが、私は違う答えを持っている。

私の答えは、「ゲーム」、そして「ポケモン」だ。

人間の価値観は、9歳から11歳の間、小学生の中学年から高学年の間に、夢中になったものやストーリーによって形成される。顕在意識が育ってくるのが9歳から11歳の間だからだ。だから、その時の体験が一生を決めるといっても大げさではない。あなたも9~11歳の頃に、何に夢中になったか、思い出してみてほしい。

たとえば、1964年生まれの私の場合、9~11歳の頃にハマったのは、『ウルトラマン』『仮面ライダー』、それに『サーキットの狼」だ。

目的よりプロセスを重視する「ウルトラマン世代」

『ウルトラマン』は、エース、タロウ、レオがリアルタイムで放映されていた頃。『仮面ライダー』は、初代からV3、X、アマゾンなど、第一次の全盛期とモロにかぶっていた。『サーキットの狼』は、11歳の時に『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった。

この3つのストーリーに共通するのは、「自分と異質なものを『敵』とみなして、それをやっつける」という価値観だ。『ウルトラマン』や『仮面ライダー』は言わずもがな、『サーキットの狼』も、主人公の風吹が走り屋のライバルを次々と倒していくことで、のしあがっていく物語である。

また、「目標を達成するよりも、そのプロセスの気合と根性を重視する」というのも、共通している。典型的なのはウルトラマンで、はじめからとっととスペシウム光線を出して怪獣をやっつければいいのに、ギリギリまで出さない。苦戦しながら気合と根性で一生懸命頑張って、最後にようやく倒すのを是とする。仮面ライダーも、戦闘の最初から、いきなりライダーキックをお見舞いすることはまずない。

また、「環境問題なんておかまいなし」も特徴的だ。たとえば、ウルトラマンは、やっつけた怪獣を片付けないで、ほったらかしたまま、「ジュワッチ」と去っていってしまう。死んだ怪獣なんかを街の真ん中に放置したら、腐って臭くて大変なことになる。『サーキットの狼』などは、化石燃料をバンバン燃やしまくりだ。

こういう価値観のもとに育っているので、私の心の奥底には、「周囲を敵とみなして戦う」「目的よりプロセス」「気合と根性」「環境は気にしない」という価値観が少なからずある。さらに、「カラータイマーが鳴るまで(ピンチになるまで)一生懸命やらない」などというちょっとひねくれた考え方まで持っている始末だ。