ダイバーシティを根付かせた「ポケモン」の功

それに対し、1980年代生まれの人たちは、「ゲーム」に影響を受けている。生まれた頃から、ファミコンやスーパーファミコン、プレイステーション、ゲームボーイなどがある環境で育ってきているから、多かれ少なかれ、ゲームの世界観が価値観の形成に大きな役割を果たしているのである。

1986~87年生まれの世代が特に影響を受けたゲームは、「ポケモン(ポケットモンスター)」だ。彼らが9~10歳だった1996年に、ゲームボーイ用ソフトとして、ポケモンシリーズの最初のゲームである「赤・緑」が発売されると、大ブームを巻き起こし、RPG(ロールプレイングゲーム)において、世界一の販売本数を記録した。

この「ポケモン」の世界観を見ていくと、明らかに1986~87年生まれの世代の価値観と一致している。まずは、「周囲を敵視しないで、一緒に遊ぶ」という価値観だ。

ポケモンのゲームでは、野生のポケモンと戦うことはあるけれど、それらを完全に叩きのめすのではなく、「仲間」にしていく。そして、みんなで遊び、楽しむのである。

1986~87年生まれのポケモン世代は、こうした世界観の中で育っているので、誰かを蹴落とそうとするのを好まない。先で述べたように、皆で共生できるよう、「世の中をどのように作り上げていくか」という社会変革に強い興味を示すのである。また、さまざまなポケモンと触れあうことで、「多様性・ダイバーシティを認める」という考え方も当たり前のように備わっている。

「絶えず進化を図ること」も、ポケモン世代特有の価値観だ。ポケモンは、育てることでどんどん進化していく。主人公自体も、特別な力を持った超人ではなく、ポケモンと一緒に成長していく普通の少年少女だ。

「誰もがヒーローになれる」時代に生きる起業家

その影響からか、ポケモン世代は常に、自分をいかに進化させていくかを考え、そのことに夢中になる。たとえば、SHOWROOMの前田氏は、UBS証券、ディー・エヌ・エーとステップを踏んだ上で、会社を立ち上げている。メタップスの佐藤氏も、日本クラウドキャピタルの大浦氏も、以前に他の事業を立ち上げながら、徐々にステップアップしている。

常に進化しようとする姿勢の背景には、「一人ひとりが進化し、個性を発揮すれば、誰もがヒーローになれる」というポケモンの世界観もある。

旧世代のヒーロー世代は「ウルトラマンだけ」「仮面ライダーだけ」というようにヒーローは1人だけであり、戦隊ものでも数人だった。しかし、ポケモンは捕らえたモンスターを育て、その個性を発揮させることで、誰でもヒーローになれる。以前、『世界に一つだけの花』という歌が流行ったことがあるが、これはまさに、ポケモン世代の価値観にすんなりフィットする。

ついでにいうと、ポケモン世代は、カラータイマーが鳴るまで本気を出さないウルトラマン世代と異なり、「変なムラがなく軽やか」だ。

このように、旧世代と比べると、まったく違う人種が生まれたくらいの違いがある。