連鎖反応で一斉に退職する

――上司や先輩とのトラブルで突然出社しなくなったケースはありますか。

【小売】上司に怒られて会社に突然出てこなくなるやつというのは、世代に関係なくいるよ。ただ昔と違って、ゆとりはあまり感情を表に出さないから、なぜかいつの間にか辞めてしまうという印象がある。

【広告】そう感じるのは、転職の仕方が以前と違うからだよ。今は少しでも不満を感じるとスマホで転職サイトにすぐ登録する。登録すると随時転職先を紹介するスカウト機能がある。それが心地よくて、会社に不満があるやつは大体登録しているが、今の会社の給与もある程度いいから急には辞めようとしない。仕事をしながら転職活動が楽にできる。そしてある日、突然好条件の会社からオファーがくると、ずる休みして面接に行き、採用が決まってしまう。突然、退職届を出された上司は「えっ、なぜ?」となる。

【サービス】昔なら不満が高まると、こんな会社は辞めてやるという気持ちが顔に出るし、転職活動も簡単ではないから、見ていてこいつは辞めそうだなと多少はわかった。転職先から電話がかかってくるとそわそわするし。でも今では転職サイトを使えば、メールのやりとりだけで面接日も簡単に設定できる。だからこちらが気づかないうちにパッと辞めてしまう。

【製薬】退職の引き金もネットの影響を受けている。うちの業界に入社する新人は薬学系など同じ大学の出身者が多いし、大学の仲間も同業他社に就職していて、常にSNSで交流している。同じ会社に入った同期とも、SNSを使って職場の情報を共有している。

たとえば、うちの職場にはこんな上司や先輩がいるとか、あっという間に横のつながりで情報が共有される。先輩・上司が相対比較され、「あいつの上司は最悪だな」「俺の上司はまだましなほうか」などと思い、辞めようと思っていた新人が思いとどまる場合もある。逆に「この会社にはまともな上司はいないな」となるとモチベーションが下がり、最悪辞めてしまう。

【小売】その中の1人が「俺、もう我慢できないから辞める」と言いだせば「そうだよな、俺も辞めようかな」と伝播する。実際に何人かが一斉に退職したことがあったよ。