「狂牛病騒ぎ」との共通点とは

ただ「宝くじに当たる」方法は簡単です。1ユニットすべて買えばいい。前後賞も三等も全部当たります。ただ、30億円かかるだけ。

宝くじだけではなく、人間はいろんなところで「願望」や「恐れ」といった感情で確率を無視します。

例えば、00年代初頭の「狂牛病騒ぎ」でも、BSE感染患者は世界人口60億人分の、十数人でした。1億2000万の日本人で感染する確率は、1人以下でした。それでも、政治や世間は過敏に反応し、焼肉屋は閉店し、吉野家は豚丼をはじめるなど、経済的に大きな影響が出た。

行列というのは、「自分で判断すること」を放棄させる装置ともいえます。調べるのが面倒くさいから、並んでいるところなら大丈夫とか、「考えるコストを抜く仕組み」です。ほかにも、いろんな商品・サービスをネットに集積した評価「星」で評価するのも、考える材料を与えているようで、思考を奪っているのです。

行列に並ぶ前に、星の多い商品を買う前に、ふと立ち止まって、冷静に「確率」や「費用対効果」を考えてみる。もちろんそれが正しい消費者なのですが、「願望」を捨てきれないのもまた、人間なのです。

友野典男
明治大学情報コミュニケーション学部教授
著書に『感情と勘定の経済学』『行動経済学 経済は「感情」で動いている』など。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)
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