単に「お金を稼ぎたい」ではない高給志向

さて、「卒業生の66%しかすぐに働こうとしない」ハーバード生ですが、なぜこのような現象が生まれるのでしょうか?

廣津留すみれ『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の「超・独学術」』(KADOKAWA)

この疑問を解決するため、まずは就職する66%の内訳を見ていきましょう。

一番分かりやすいのは、「53%がコンサルティング・金融・テクノロジー業界に就職」というデータです。イメージ通り、彼ら彼女達は各業界でバリバリ働いてお金を稼ぎます。

ただ、その職業選択に至るまでの思考のプロセスには特徴があります。

これまでのように単に「お金を稼ぎたい」ではなく、「学費ローン返済のために」「起業資金を調達するために」「大学院資金を貯めるために」という目的のもと、報酬の高い職業を選んでいる卒業生が実に多くなっているのです。

“次”を前提にした新卒就職も多い

そして、「働く」ことを選んだ人にしても、米国では日本のような終身雇用制度がないため、1つの組織でトップを目指すのではなく、できることなら転職して次々に良いポジションを狙う、というのがハーバード生の卒業後のプランの1つとなっています。

今の仕事で良い立ち位置にきたら、そこで築いた人脈を連れて、次の目的地へささっと動きます。短時間でお金と地位を手に入れてより大きなゴールへ近づくための効率の良い方法なのです。

先程の私の友人はいずれ、今の会社を辞めて大学院に進むつもりでいるようです。このように多くの学生が、いったん就職してから再び大学院に戻り、専門性を磨くことや新しい知識を習得することを望みます。

つまり、「66%が就職」といっても、それは一時的なものを含めてなのです。卒業生が学部卒業後に直接大学院に移らず、いったん就職するのは、今後の活動資金をつくるためです。