「ゾゾスーツをどう思うか」

ゾゾやアマゾンはネットの利便性を生かして、服を多くの人に売ることを常に考えている企業である。対して、ファブリック・トウキョウはネットを活用して、顧客とのコミュニケーション機会を増やすことを常に考えている企業である。同じネットで服を売る企業でありながら、服を着る楽しさを思い出させてくれるのは、明らかに後者である。

取材の最後に森社長に「ゾゾスーツについてどう思うか」という少し意地悪な質問をしてみた。すると意外にも「あれは素晴らしいですよ!」と興奮気味に答えてくれた。

「私もゾゾスーツを着てTシャツやニットを購入しました。あれは本当によくできた仕組みですよ。世間では注文したけどサイズが合わないという声も多く聞かれますが、サイズには好みの問題が大きく影響しますからね。そういう意味ではオーダーメイドの服の良さと難しさを多くの人に知ってもらう良い機会を作ってくれたと思います」

ゾゾスーツに対して嫌悪感を示すと思いきや、それは大きな間違いだった。ファブリック・トウキョウが目指すのは「服を売りたい」ではなく「オーダースーツの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい」なのである。そこに着るだけでサイズが測定できるサービスがあろうとなかろうと関係ない。安さや利便性に振り回されない、服が本来持つべきであるワクワク感を取り戻そうとしているファブリック・トウキョウは、近い将来、日本を代表するIT企業になるに違いない。

竹内 謙礼(たけうち・けんれい)
有限会社いろは代表取締役
大企業、中小企業問わず、販促戦略立案、新規事業、起業アドバイスを行う経営コンサルタント。大学卒業後、雑誌編集者を経て観光牧場の企画広報に携わる。現在は雑誌や新聞に連載を持つ傍ら、全国の商工会議所や企業等でセミナー活動を行い、「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、多くの経営者や起業家に対して低料金の会員制コンサルティング事業を積極的に行っている。著書に『売り上げがドカンとあがるキャッチコピーの作り方』(日本経済新聞社)、『御社のホームページがダメな理由』(中経出版)ほか多数。
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