メディアが大好きなのは、例えば、長生きをしている有名人を取材し、長生きの秘訣(ひけつ)を記事化、番組化することです。こうして、人間誰もが長生きを望んでいることを前提として、記事や番組はつくられていきます。しかし、これは高齢化社会の真実ではありません。

現在、高齢化が進んだ日本では、年寄りを批判することはタブーになっています。終末期治療がいかに無駄か批判をすると、「年寄りは早く死ねというのか」という声が返ってくるので、メディアはリスクを取ろうとしません。しかし、日野原医師にしても金さん銀さんにしても、例外にすぎないのです。確かに、健康寿命を超えて100歳以上まで生き続けることは素晴らしいことです。しかし、それだけのことです。

終末期治療の莫大なコスト

終末期治療に関しては、最近、批判の声が高まっています。それは、これが人間の尊厳を損なうともに、下世話な言い方になりますが、カネがかかりすぎるからです。

終末期治療にかかるコストは莫大です。例えば、がんの場合は、入院・手術となれば、医療費はすぐに100万円を超えてしまいます。しかし、患者はその全額を払っているわけではありません。日本は国民皆保険の国であり、患者はなんらかの公的保険に加入しているからです。

例えば75歳以上の場合、後期高齢者医療制度によって窓口医療費負担は1割と決まっています。これに、高額療養費制度が適用されると、所得による限度額の違いはありますが、多くの人は1カ月の上限が4万4400円(外来に関しては1万2000円)となります。

次の[図表2]は、1カ月の医療費を100万円としたとき、後期高齢者医療制度を利用した場合の自己負担額のグラフです。この場合、1カ月100万円かかったので、患者は窓口で1割負担の10万円を払わなければなりませんが、高額療養費制度によって5万5600円が支給されるので、実際の支払額は4万4400円となるのです。

では、100万円から4万4400円を引いた95万5600円は、実際には誰が払っているのでしょうか。言うまでもないでしょうが、公的保険の保険料と公的資金(税金)からの補てんです。つまり、結局、国民全体で費用を分担しているわけです。さらに突き詰めて言えば、現役世代の人々が負担しているのです。若い人たちが、余命が残り少なくなった高齢者の終末期の医療費を払い続けているのです。