すでに医療費全体は2016年度で41兆円を突破しています。国の税収がおよそ56兆円ですから、このままでは国民皆保険制度が維持できるはずがありません。なぜなら、若い世代が減少し、高齢者が増えるのですから、これ以上、保険料も税収も増えるわけがないからです。それなのに、メディアはこの現実を無視し、長寿を礼賛し続けるのです。

「生かされてしまう」ことのむなしさ

この世の中に、なにも認識できないまま、寝たきりで90歳、100歳まで生きたいと願う高齢者がどれほどいるでしょうか? 終末期治療のむなしさは、それが決して本人のためにならないことです。

救急病棟には、救急車で、寝たきりの老人が心肺停止で運ばれることがあります。そうして、応急処置を施されて助かっても、施設や自宅に戻されて、また寝たきりになるだけです。救急車が1回出動するだけで、その費用は平均して5万円ほどかかります。

また、胃ろうを付けて寝たきりになると、「要介護5」に認定されます。すると、月々約35万円が介護保険から支給されるので、年間で400万円以上のおカネが寝たきり患者に費やされます。さらに、呼吸機能が落ちれば人工呼吸器を付け、腎機能が落ちれば人工透析も施されます。こうなると、年間で1人1000万円はかかります。こんな患者が10万人いるとしたら、総額は1兆円です。これを、なぜ、現役世代が懸命に働いて強制的に支えなければならいのか、合理的な理由はどこにもありません。

麻生太郎副総理は、2013年1月21日の社会保障制度改革国民会議で、終末期医療の患者を「チューブの人間」と言い、終末期治療に関して「私は少なくともそういう必要はないと遺書を書いているが、いいかげんに死にたいと思っても『生きられますから』と生かされたらかなわない。さっさと死ねるようにしてもらわないと」などと語って、メディアの集中砲火を浴びたことがありました。結局、麻生氏はこの発言を謝罪することになったのですが、なぜこれがいけないか? 私には理解できません。