75歳を超えたら終末期医療はやめよう

ともかく、このような壮大な無駄をなくすには、まず、メディアが長生きを礼賛することをやめること。そして、暴論かもしれませんが、75歳を超えて後期高齢者になったら、終末期治療を禁止してしまうことです。要するに、人工的に生かすのではなく、自然に死んでもらうようにすることです。

そのために私は、75歳になったら国が保険証の返納を求めてもかまわないと思っています。保険証があり、自己負担金が少ないから高額な終末期治療も受けてしまうのです。もし、それが何百万もかかり、結局は助からないとなったら、誰がそれを選択するでしょうか?

実は、いまの医者は人間の自然な死に方については、知見がありません。医者というのは、治療を施した患者の死しか知らないのです。終末期に延命治療を行って、力尽きて死んでいく患者の姿しか見ていないのです。これは、看取る側である家族も同じで、私たちもまた、そうしたなかで死んでいく親の姿しか見ていないのです。

ですから、ここで自然な死に方を取り戻さないと、私たちはますます人間的な生活から遠ざかってしまうでしょう。

富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト
1947年生まれ。大教大附属天王寺小・中・高、東京慈恵会医科大学卒。新日本プロレス・リングドクターを務める一方、『不要なクスリ 無用な手術』『ブラック病院』など著書65冊以上。
(写真=iStock.com 図版=富家孝『ブラック病院』(イースト・プレス)より)
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