外相会談ではいずれの問題も平行線のまま

照射事件や韓国人元徴用工の訴訟をめぐる問題で日韓関係が悪化するなか、河野太郎外相と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の二人が日本時間の1月23日夜、スイスのダボスで1時間に亘って会談した。しかしいずれの問題も平行線のまま解決の兆しさえ見えなかった。

会談の冒頭で河野氏が「日韓関係が非常に厳しい状況にあるからこそ、直接顔を合わせて会談することに意味がある」と語りかけても、康氏は「日本の海上自衛隊は1月18日以降、計3回の『威嚇飛行』を行った」と主張した。元徴用工訴訟の問題についても康氏は「日韓関係に未来志向的な発展の努力の妨げにならないよう知恵を出し合おう」と日本側の対応を求めた。

新聞各社は水と油のように同調することのない会談をきっかけに日韓関係悪化の現状を懸念する社説を書いている。

「今回の言いがかりにも証拠に基づく反論を」

1月25日付の産経新聞の社説(主張)は「韓国の対日非難 制裁の検討もやむを得ぬ」と韓国に対してかなり厳しい見出しを付け、中盤でこう論じている。

「韓国の康京和外相は、河野太郎外相との会談冒頭、『威嚇飛行』について『大変閉口し、遺憾に思う』と切り出した」
「河野氏が反論したのは妥当だが、それだけでは十分ではない。レーダー照射について謝罪や再発防止を強く求めるべきだった。外交当局の本領を発揮するときであり、今回の言いがかりにも証拠に基づく反論をしてもらいたい」
「このままでは、通常の警戒監視活動にあたる自衛隊機と隊員が危険にさらされ続ける。それでも日本の安全保障に必要な警戒監視活動を控えることはできない。再発防止は急務だ」

さすが産経社説である。「威嚇飛行」と非難する韓国に対し、「謝罪」「言いがかり」「危険」などの言葉をためらうことなく使う。産経社説でなければ書けない主張である。

ただ産経社説が危険なのは、売り言葉に買い言葉でことさら韓国を反発させかねない。「北風と太陽」のイソップ寓話ではないが、威嚇すればするほど相手は頑なになるだけである。この辺りを産経新聞の論説委員の面々はどう考えているのだろうか。

「威嚇であり、まるで敵国に対する態度」

産経社説は「韓国国防省が、海上自衛隊の哨戒機が東シナ海で韓国海軍艦艇に威嚇飛行をしたと非難し、再発すれば『軍の対応規則に従って強力に対応する』と警告してきた」と書き出している。

これは韓国軍合同参謀本部が23日、日本の哨戒機が同日午後2時3分ごろに東シナ海の暗礁の離於島(イオド)付近で、韓国軍の艦艇に高度60~70メートル、距離540メートルの「接近威嚇飛行」を行ったと発表したことを指す。さらに韓国は1月18日と22日にも「威嚇飛行」があったと主張し、「明らかに挑発だ」と非難している。

産経社説は「防衛省は、海自機が国際法や国内法に従って適切な飛行をしていたと反論した」と書いたうえで、「韓国側が、『強力に対応する』と海自機への武力行使をちらつかせたことこそ威嚇であり、まるで敵国に対する態度である。到底容認できない」と主張する。

「武力行為をちらつかせる」「まるで敵に対する態度」には間違いないが、格調高くあるべき社説がそう書いてしまっては身も蓋もないだろう。ここはもう少し押さえた表現にしたい。

嫌韓だけでは前に進まない。外交は攻めたり引いたりすることが重要だ。身を切らせて骨を断つ技を使う必要がある。問題は安倍政権にその力があるかどうかである。