だが、立本さんのすごいところはここからだ。55歳のときに家族を含めた今後の年齢ごとのライフイベントと自分の収入をシミュレーションし、生活を維持するために何をすべきかを考えた。退職を機に目減りする企業年金を補うために生保のドル建ての個人年金に加入していた。出費を抑えるために生命保険料を見直し、大幅に削った。
「60歳以降の収入は企業年金と個人年金で約240万円、厚生年金の報酬比例部分が支給される62歳から265万円、公的年金の満額が受け取れる65歳以降は330万円になります。しかし、生活に余裕を持たせるには今の仕事のほかに何か別の収入源が必要だと考えたのです」
それが新たな挑戦となる株式投資家の道だった。会社員時代は持ち株会と大手企業の株をいくつか持っていたものの、ほとんど貯蓄に回していた。その額は4500万円。60歳以降はそれを取り崩していくよりは“お金に働かせるべき”と考え、50代後半から本を読み、セミナーに通って投資の勉強を重ねた。
「60歳になってから老後の大事なお金を投資に使うのはリスキーだといろんな評論家は言います。確かにそうかもしれませんが、銀行預金の金利はゼロに近く、国債の金利も0.05%程度です。しかも日本人の金融資産の預貯金比率は諸外国に比べて高く、米国は18%程度。私も預金の40%に限定して投資しています」