両親に連れられカレーを食べ歩いた少女時代

齋藤が1人で1日に提供できるカレーの数は頑張っても130食。3時間も並んでくれる客たちの期待に少しでも応えたいと毎日必死だった。朝7時から仕込みを始め、この日、店を後にしたのは夜11時。コンビニで購入した缶チューハイ片手に、1人トボトボと帰路につく35歳の後ろ姿は、心地よい疲労感に満ちているようにも見えた。

朝7時に仕込みを始め、帰路につくのは夜11時(写真提供=毎日放送)

齋藤の原点は、無類のカレー好きである両親にあるという。物心ついた時から毎週のようにさまざまなカレー屋に連れて行かれ、高校生になると自らも友人とカレーを食べ歩くようになった。

【父】「思い出の店はボルツのカレーですかね。自分のペースで食べたい店に子供を連れて行ってた。子供のペースには合わせない(笑)」

【母】「子供の喜びそうな店なんて連れて行ったこともないよね」

オープン以来初の「一週間休業」

自他共に認める“カレークレイジー”である齋藤は、平日は朝から晩まで厨房に立ち、定休日は欠かさず人気店のカレーを食べに行く。人を惹きつけるカレーには必ずちょっとした工夫がある。料理人の動きをつぶさに観察し、実際に食べて分析することをひたすら繰り返し、自分の味を作り出してきた。

この日、大阪まで足を延ばした齋藤が「今年一番の衝撃」と語ったのが、中華料理店「大衆中遊華食堂 八戒」(大阪・東大阪市)のカレーだった。猪肉や豚肉の魯肉が添えられた、パンチの強いカレーに衝撃を受けた齋藤は、使っているスパイスを料理人に尋ねる。おいしさの秘密について知りたくて仕方がないようだ。

【齋藤】「自分と違うお料理を作れる人と会った時って戦いですよね。自分もやりたいっていう衝動に駆られます」

齋藤はその後、一週間店を閉めた。オープン以来、初めてのことだった。