TPPの内容が知的財産権などを含めてよりよい内容に修正できるなら、TPPに米国が戻ることも十分にありうる。実際、米国においてもTPPに近しい形の貿易協定への復帰に向けたロビー活動が活発に行われている状況となっている。中国などの国家資本主義に対抗するための最良の方法は小さな政府を実現することである。減税や規制廃止を行うことで経済の活力が創造され、結果として競争に打ち勝つことができる。

トランプは大統領に再選できるのか

19年以降の米国政治のテーマにはインフラ投資が浮上することになるだろう。トランプ大統領は米国の有権者にインフラ設備をリノベーションすると約束している。共和党の考え方は民主党のインフラ投資の考え方とは異なる。共和党は空港や港などの人のアクセスを恒久的に改良する政策を実行するのに対し、民主党は一瞬の雇用をつくり出すために無駄な建設を行うことを求めて税金を引き上げていこうとしている。

1つ事例を挙げるならば、民主党が炭素税などの環境税の導入を求める場合、われわれは対案として公共交通機関を整備することで、米国民の交通アクセス改善と増税回避の同時実現を主張するだろう。

20年の大統領選挙については、まずトランプ大統領は共和党内の大統領候補者を決める“予備選挙”で自党内からの挑戦者を退けることが必要だ。16年大統領選挙に際して、トランプ大統領は共和党内での激戦を制することで自党からの指名を獲得した。

20年の予備選挙では、党内からの対抗馬として、オハイオ州の前知事であるジョン・ケーシック氏、12年大統領選挙の共和党候補者であったミット・ロムニー氏などにもチャンスがある。最終的には売名目的も含めて20人以上の人々が予備選挙に名乗りを上げてくることになるだろう。民主党側の予備選挙も事情は同じであり、多数の候補者が乱立する見通しだ。ジョー・バイデン元副大統領、民主社会主義者のバーニー・サンダース氏、そしてヒラリー・クリントン氏などの著名な人々の名前が挙がっている。

若者の間では学校教育などの影響を受けて、歴史を知らず社会主義の脅威を理解していない人々が増えてきている。米国メディアはベネズエラや北朝鮮などの社会主義国の問題を報道する責任があり、今こそ近代史を学び直す重要性が高まっていると言えよう。

(構成=渡瀬裕哉 撮影=原 貴彦 写真=iStock.com)
【関連記事】
日本がファーウェイを締め出す本当の理由
「トランプと安倍は蜜月関係」は大誤解だ
中国成長の心臓部「深圳」を襲う初の試練
中国が怖くて"空母"に頼る安倍政権の詭弁
韓国に広がる「日本どうでもいい」の理屈