共和党が主導権を握る州では減税政策を進めやすい

われわれ(全米税制改革協議会)はトランプ政権の最初の2年間で大きな成果を上げてきたが、米国政治において税制改革・規制廃止の観点から、われわれは国政レベルの政局だけではなく全米50州の地方レベルでの州知事・州議会の動向も注視している。

グローバー・ノーキスト●1956年生まれ。ハーバード大学卒。全米税制改革協議会議長。共和党の税制改革に対して最も影響力を持つとされる。

米国は州政府によって全く異なる税率を持っており、納税者は高税率の州では苦しみ、低税率の州では喜んでいる。トランプ政権は連邦税を変えることに成功したが、今後は各州の減税を実現していくことが重要だ。現状としては共和党が主導権を握っている州では減税政策を推し進めやすく、規制廃止についても同じことが言える。

地方レベルでの政治改革は実は大統領選挙にも影響を与えている。

大統領選挙時にラストベルトの製造業地帯の衰退が共和党支持者の増加原因とされた。同地域の衰退は国際競争の影響を受けていることも確かだが、実は米国内での地域間競争に敗北したことの影響も大きい。ラストベルトは工業化が進んだ地域であったが、民主党や労働組合の影響力が強く、地場産業に対し税金や規制による破壊的な打撃が加えられ続けてきた。

そのため、それらを嫌った企業が米国南部の共和党が強い州、特に労働権法などの労働組合の力を弱める州法が存在する地域に生産拠点を移してきたのだ。

同地域での現状に対する不満が強まった背景には、米産業が立地競争に敗北する政治を行ってきた民主党への憤りがある。トランプ政権によって連邦税が引き下げられたため、今後は各州の税率や規制などに相対的に注目が集まることになり、一層の改革を求める声が強まるだろう。

われわれは常に全米50州の州知事・州議会の勢力状況をマップ化してチェックしており、各州に対するきめ細かな選挙戦略の落とし込みをしている。

中国の不公正なルールを変えるための貿易戦争なども必要だろう。20年前に中国の貿易環境が是正されていた場合、現代にトランプ大統領が米国民から求められたかどうかはわからない。