「局長を説得するために、今少し待ってほしい」
2017年6月には、売却金額の上限を森友学園側に伝えていたというスクープを掴む。
「森友学園に国有地を大幅に値下げして売却した問題で、近畿財務局が売却価格を決める前に、学園側に対して具体的な金額を示したり、学園の財務状況を聞き出していたことが、関係者の取材でわかりました。
財務局の担当者は、学園側が支払うことのできる金額の上限を確認したということで、学園側は当時の財務状況からおよそ1億6000万円と答えたということです」
結果的には、学園側が示した上限と財務局が示した下限の範囲内に収まった。
さあ、これで出せると思った相澤氏だが、Lデスクは上司である社会部長に報告した。すると、
「相澤さん。すみません。部長に相談したんですが、今はまずいと。これだけの大ネタですから報道局長に報告しないといけませんが、まだ国会会期中なので、報道局長がうんと言うはずがないと。局長を説得するために、今少し待ってほしいということでした」
小池局長の意向を忖度して、下の者が右往左往していた
報道局長が6月の定期人事異動で交代していた。小池英夫氏が昇格したのである。
「小池報道局長は安倍官邸に近く、今の政権にとって不都合なネタを歓迎するはずはないというのだ」
しかし、検察当局も国会の会期が終わるのを待っていて、森友学園のガサ入れをかけようとしていた。原稿は一向に出る気配がない。Lデスクが、「報道局長を説得するのが難しいので、追加取材をお願いできないか」と電話してきた。
追加取材を終えた相澤氏は、社会部からの要請もあり、原稿の中にこういう文言を盛り込むのだ。
「大阪地検特捜部もこの情報を把握して捜査している」
こうしてようやくこのスクープが陽の目を見るのである。何のことはない、小池局長があれこれ指図するというより、彼の意向を忖度して、下の者が右往左往しているのだ。
この構図は、安倍首相のご意向を忖度して、文書の改ざんを主導し、停職3カ月の処分を受けた佐川宣寿・財務省理財局長(当時)たちと同じである。
これが、みなさまのNHKだというのだから、呆れ果てるではないか。