「資産家の高齢者が、子どもが優しくするのはお金目当てだとか、友達に狙われているなどと疑うことは少なくない。適度にお金があって、心許せる友人がいるのが豊かな老後」(畠中氏)

そのために畠中氏が必要と考えるのが、「身の丈に合った額」を貯めること。収入に比して過大な額を貯めようとすると、趣味や付き合いを我慢するなど何かを犠牲にせざるをえないため、結局は心貧しき老後になりかねない。

※各グラフはリサーチプラス調査(2016年10月5~7日)のアンケートデータ。「世帯年収1000万円以上だが比較的生活に余裕がない」「同300万円台以下だが比較的余裕がある」とそれぞれ回答した者(各100名)が7つの設問に応じた回答をもとに編集部作成。

その人の収入によって貯められる額は違うし、そもそも生活水準が異なるので、同じ額を貯める必要性も低いのだ。

「元役員が自腹を切ってハイヤーでゴルフ場に。そんな現役時代を引きずった使い方では、お金がいくらあっても足りないし、寂しい」(同)

反対に、地元の行事に参加し、数千円の謝礼を貯めて妻にプレゼントすることが楽しみ、という男性もいるという。

「友達が多く、リッチな人とも、そうでない人とも、それぞれに合った付き合い方ができれば視野も広がって幸福感が高いはず。ギブ&テークの関係をたくさん築いておければ、老後は豊かになる」(同)

もちろん、ある程度の老後資金は必要だが、「年金の不足額95歳までの30年分、プラス住宅の修繕費といった特別支出の額が、退職金と預貯金で用意したい金額。3000万円なくても成り立つ世帯は意外に多い」と、畠中氏。むしろ働くスキル、友人関係を築いておきたい。

畠中雅子(はたなか・まさこ)
ファイナンシャルプランナー
2000年、駒澤大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。大学時代よりフリーライター、1992年ファイナンシャルプランナー。各メディアに連載多数。セミナー、講演、個人相談など。著書に『サヨナラ お金の不安』『ひきこもりのライフプラン――「親亡き後」をどうするか』(共著)ほか。
 

菅井敏之(すがい・としゆき)
元メガバンク支店長

コンサルタント。1960年生まれ。83年学習院大学卒業、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。東京・横浜で支店長。48歳で退職、起業。アパート経営のほか都内で喫茶店を営む。資産形成や住宅・保険の選び方などで講演・セミナー多数。著著に『金の卵を産むニワトリを持ちなさい』『お金が貯まるのは、どっち!?』ほか。

 

長崎寛人(ながさき・ひろと)
ファイナンシャルプランナー
1963年、長野県生まれ。NPO法人日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会会員、CFP認定。国内銀行、外資系損害保険会社を経て保険代理店を経営。その後、介護スタッフとして障がい者施設や高齢者介護施設などに勤務、介護に特化したFPに。著書に『脱・老後破産マニュアル』。
 
(写真=iStock.com)
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