若い社員が「辞めてやる」と即断即決する上司の傾向
では、新人が理想的だと思う上司・先輩とはどういう人なのか。日本能率協会が実施した「2018年度新入社員意識調査報告書」によると、トップ3は以下の通りだ。
「部下の意見・要望を傾聴する上司・先輩」(33.5%)
「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(33.2%)
「部下の意見・要望に対し、動いてくれる上司・先輩」(29.0%)
親切かつ誠意ある上司ということだろうか。こういう上司がどれくらい世の中にいるかどうかは別にして、確実に言えるのは、これと真逆の上司はやはり不信感を持たれやすいということだろう。
例えば、部下の意見を聞かずに、一方的にまくしたてる上司。たいした指導をせずに「俺の背中を見て学べ」的な上司。部下の要望を聞いてもその場しのぎで「わかった」と言いつつ、何もしないでほったらかしにしている上司……。そうした態度が離職リスクを高め、若い芽を摘む結果となってしまうのだ。
「俺についてこい」式の上司はもはや過去の遺物
実際、上司の姿勢に悩んでいる新人も少なくない。生命保険会社の入社2年目の営業職の女性社員は筆者取材にこう答えた。
「女性が多い職場ですが、私はがんばってずっと働きたいと思っています。ただ、同期の女性には結婚まで働ければいいという腰掛けの感覚でやる気がない人も多いです。だから、仕事を一生懸命にやっても同僚からは『何をそんなにがんばっているの』と嫌みを言われる。上司もそんな女性社員の態度について何も言いません。上司に自分の今後やキャリアについて相談したくても面談の機会が少ないですし、たまに相談すると『君の気持ちもわかるけど、みんなとうまくやってよ』と言うだけで、話の途中で忙しいからと打ち切られます」
面倒なことには関わりたくない“事なかれ上司”のために職場で孤立感をおぼえる人も少なくないだろう。結局のところ、上司が手を差し伸べることがなければ早晩、この入社2年目の営業の女性は近いうちに退職を決断してしまうかもしれない。
大手広告代理店の人事部長は上司の役割についてこう指摘する。
「組織として大きな成果を出すにはチーム全員の可能性を引き出すことが大事です。当社では課長に、目標力、役割力、評価力の3つの能力を発揮するように求めています。目標力とは部下が自走できる目標を与えること、役割力は成果が出せる配置をすること、評価力は部下の弱みと強みをフィードバックし納得させる力です。この3つがそろって部下は育つのであり、それができない上司は失格です」
何も言わずに俺についてこい式の上司はもはや過去の遺物にすぎない。“上司力”が新人の離職をとどめ、組織の成果を生み出すカギを握っている。