離職の「防波堤」となる上司ならない上司の特徴

よく考えて見れば、初めて社会人になって働き始めた時、「労働時間が長い」とか、「業務量の多寡に不満を感じる」とかいうことは、ほとんどの新入社員が多かれ少なかれ感じることだろう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AH86)

ポイントとなるのは、それが原因で早期離職してしまうということだ。多くの企業で、筆者が採用や人事の現場を取材して感じるのは、そうした新人の違和感や悩みを少しでも解消するためには上司の果たす役割が小さくないということだ。つまり、「上司がどういう人物であるか」ということが入社間もない社員の離職・転職を大きく左右する。

2016年4月に新卒で大手証券会社に就職した3年目の男性社員は、筆者の取材にこう話した。

「入社当初から残業時間も長いし、営業ノルマもきついし、正直言ってうちの会社はブラックだなと思い、入社半年を過ぎて転職会社に登録しました。それでも何とかやってこられたのは、上司に恵まれたからです。自分の気持ちを理解し、励ましてくれますし、上司の丁寧なサポートがあるから続けてきました。でも、今の仕事が本当に自分に向いているかわかりませんし、会社の体質が変わるわけでもないので、チャンスがあれば転職したいと思っています」

本人の転職したい気持ちは変わらないが、上司が離職の防波堤になっているということだ。この入社3年目の男性にとって、それほど上司の存在は大きいのだ。

職場内に目指したい上司「いる」43%、「いない」57%

日本能率協会の「入社半年~2年目若手社員意識調査」(2018年10月5日)では「現在の職場内に目指したい上司、目標にしたい人がいるか」を尋ねている。

「いる」と答えた人が43.0%、「いない」と答えた人が57.0%だった。

興味深いのは転職意向との関係である。「目指したい上司・目標にしたい人」が「いる」人の中で「転職することは考えていない」人は57.6%であるのに対し、「いない」人では38.6%だった。

つまり、目指したい上司がいる社員のほうが簡単には転職しない、ということだ。

別の質問では、目指したい上司が「いない」人は「直ぐにではないが、転職することを検討している」(40.4%)、「近いうちに転職することを検討している」(15.8%)の割合が「いる」人を大きく上回っている。上司に失望すればするほど転職の引き金になりやすいともいえる。

逆に「現在の職場を辞めず、在籍している理由に最も近いものは何か」という質問に対して最も多かった答えは「プライベートを充実させられる環境のため」(18.8%)と並んで「人間関係が良好で伸び伸びと働けているため」(18.8%)の2つが最も多かった。

上司や先輩との良好な関係が離職を踏みとどまらせていると解釈できるだろう。