文科省と厚労省が実施した「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果」(2015年)によれば、補助金が最も多く支給される認可保育所であっても、私立の場合利益率は平均で4.5%、公立の場合は大幅な赤字だ。平均的な損益計算書を見ると、公立の保育所は支出が収入の4倍もあり、赤字はすべて税金で補てんされている。私立の場合も、9割以上が税金で賄われている。事業活動収入は78%が運営費収入、16%が補助金であり、利用者から徴収する保育料は全体の3%未満である。問題は公立でも私立でも、認可保育園はほぼ税金によって賄われているということである。

補助金審査が間に合わない

では、鳴り物入りで始まった「企業主導型保育所」の制度はどうだろう。実は、これもほぼ100%税金で賄われている公営の保育所だ。「認可保育所並みの公的補助を受けられる」がうたい文句で、建物の建設費の大半をカバーしてくれるうえに、ランニングコストのほぼ100%面倒を見てくれるなら、オイシイ話のように聞こえる。

上念 司(著)『日本を亡ぼす岩盤規制 既得権者の正体を暴く』(飛鳥新社)

しかし、実際にこの制度を利用して立ち上がった保育所は、いま大きな問題に直面している。例えば1億円の建物を新築し、新たに保育所を作る場合、補助金が支払われるタイミングのせいで、事業主は一時的に6250万円の持ち出しを強いられることになる。また、運営費に対する補助金も支払いが大幅に遅延している。

現在、補助金の支給を受ける審査が非常に遅れており、4月に開園した事業主は、10月ごろまでの約半年分の運営費を、全額持ち出しせざるを得ない。東京都心部のある企業主導型保育所はそのせいで資金ショートし、保育士への給料未払いが発生しているという。

この補助金の審査を行っているのは、内閣府が業務を委託している公益財団法人児童育成協会だ。この団体の平成30年度(2018)事業計画では、企業主導型保育園事業に関する補助金約1697億円の使途を委託されている。

私が取材した補助金コンサルタントによれば、企業主導型保育所はまだできたばかりの制度であるため、申請要件や監査項目についても、具体的なことは問い合わせてみないと分からないとのことだった。例えば、この制度の初年度は補助金の対象外だった暖房便座と、壁掛け式のエアコンが、翌年度は対象内になるなどの混乱が発生している。何が補助金対象か、いちいち確認しなければ分からないが、いくら児童育成協会に電話をかけても全くつながらない状態が続いているという。補助金申請の審査業務もパンク状態なのだろう。