共働き世帯にとって切実な、保育園の待機児童問題。厚生労働省の調査によれば、保育園の定員枠は着実に拡大しているが、都市部を中心に保育サービスは相変わらず不足している。経済評論家の上念司氏は「柔軟性を欠く全国一律の認可基準や補助金制度が、ニーズの高い地域での保育事業への新規参入を阻んでいる」と指摘する――。
※本稿は、上念司『日本を亡ぼす岩盤規制』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
保育定員が増えても待機児童が減らない理由
政府は、保育園の定員を増やす新たな枠組みを実施してきた。認定こども園、企業主導型保育所、自治体の認証保育所など、保育所の定員は確かに増えた。しかし、それでも待機児童がゼロにならない。働く女性の増加とともに不足した保育サービスの問題は、個人の力でどうにかなるものではない。
データを見ると、待機児童数は2014年までは減少傾向だったが、2015年から再び増加に転じ、2017年には2万6081人になった。保育所の数が減っているわけではなく、むしろ爆発的に増えている。厚生労働省の資料によれば、待機児童が増加傾向に転ずる2015年から2017年までの間に、保育所(認定こども園、特定地域型保育事業を含む)の定員は約17万人増加している。とくに、2016年から始まった企業主導型保育事業により、2597施設、定員5万9703人分が新たに確保された。ところが、それでも待機児童が増加してしまった。これはなぜか?
待機児童が増えた理由は、保育需要の地域的な偏りだ。東京、千葉、埼玉の待機児童数だけで全体の44.6%を占めている(2017年)。通常の市場メカニズムが働くのであれば、不足している都市部の保育料は高騰し、それに呼応して新規参入が増え、供給不足は解消するはずだ。しかし、保育所の設置認可が基本的に全国一律であり、なおかつ、支給される補助金も全国一律であるため、都市部では採算が取れず、参入する業者が少ないのだ。