管理したがるが予算は出さない

今のやり方だと、補助金の支給要件の審査に膨大な工数がかかるうえ、支給後の監査もとても大変だ。補助金が利用者に渡されるようになれば、こういった手間はすべて省ける。まさに一石二鳥ではないか。(1)幼保一元化、(2)保育所の設置要件緩和、(3)保育料の自由化、(4)保育バウチャー制度に、(5)保育政策の国から地方自治体への移管、を加えて政策パッケージとし、待機児童問題の最終解決を図るべきだ。

こうすることで、保育ニーズの高いところでは保育料が上がり、供給側の新規参入インセンティブも上昇する。保育バウチャーの金額は地域によって異なっていてもよい。都心の保育料が高い地域と、地方の保育料が安い地域のバウチャーの金額はむしろ異なって当然だ。その意味で、保育所の設置に関する政策の主体は国ではなく、地方自治体であることが望ましい。これが(5)の政策の意図である。

これに対して、北欧型のソリューションは、あくまでも国が供給をコントロールする代わりに、潤沢な予算を配分するというものだった。日本の財務省はどうもこちらのソリューションをちらつかせながら、十分な予算を配分せずに放置している。まるで、増税の口実に使うために、わざと問題を放置しているように見る。

岩盤規制と既得権を放置し、問題の原因を利用者である国民になすり付けるのはいかがなものか。まさに本末転倒、泥棒と警察が逆転したような気分だ。

上念 司(じょうねん・つかさ)
経済評論家
1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。
(写真=PIXTA)
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