監督就任時、描いていたチーム像
――ロシアW杯2カ月前での監督就任でした。就任要請を受けられたとき、どういったチーム像を描いていましたか?
2018年に入って、必ずしも代表チームの状態はよくはなく、さらに突然の監督交代でチームが混乱していた。本来であればW杯に向けて4年間準備をして臨むのに、極めて短い期間でチームをつくらなければならない。本来はいろいろテストもしたかった。でも、できない。だからこそ監督の就任要請を受けたときは、チームを“激変”させなければいけないと考えていた。
とはいえ、チームというのは生き物。そう簡単に変えることはできない。変えることにはじめから自信があったわけでもない。それでも日本代表に集まっているメンバーであれば、チームを変えられる可能性があるとは思っていた。選手個々のタレントは非常にレベルが高く、ヨーロッパで活躍している選手も多い。世界のトップクラブで揉まれているメンバーもいる。
だからこそ、アプローチの仕方によってはチームを大きく変化させられると期待していた。
選手同士で化学反応させる
――実際にワールドカップ前、最後の強化試合だったパラグアイ戦で逆転勝利し、チームの状態は上向きはじめます。チームを“激変”させるために、どのようなことをされていましたか?
まずは改めて、自分が選考した選手をリスペクトし、持っている能力やスキルを最大限に引き出そうとした。幸い、監督に就くまでの2年間、技術委員長という立場で、チームを側面からサポートする立場だったので、各選手のことはわかっていた。
力を引き出したうえで、個と個で化学反応を起こさせ、それまでとは違うパフォーマンスを生み出す。そうすることで、本番で強豪国に通用するプレーの選択肢を増やしていく。チームづくりは、その作業の繰り返しだった。一朝一夕にはできないが、ここがチームの生きる道だと、短期間でもその積み上げを行っていた。