元ライバルたちとの意思疎通の取り方

――新しい代表監督に森保一氏が就任しました。ワールドカップでは森保氏、リオ五輪監督だった手倉森誠氏がコーチをされていました。連携はどうだったのでしょうか?

手倉森は前監督時代からA代表に帯同してきたコーチで一番チームを知っていた。森保も将来的に代表チームの監督にふさわしい指導者だったのでスタッフに入ってもらった。

AFLO=写真

ただ、自分のとったチームのつくり方には驚いたと思う。本来であれば2カ月という限られた時間の中で、メンバーを固定してチームづくりをするのが当然だろうと思っていただろうから。しかし、実際にはテストマッチでも選手をターンオーバー(入れ替え)し、次々と新しいアイデアを取り入れていった。

ただ正直に言うと、3人のサッカー観は三様だった。お互いにJリーグの監督として競ってきた仲でもあるし。だからこそ、彼らとも選手たちと同じで、それぞれの意見を出し合い、実際にピッチでテストをして最適なプレーを選んだ。その繰り返しで「この大会は全員で、総力戦で戦うぞ」というメッセージは伝わっていったのではないか。

代表監督退任63歳の次のキャリア

――最後に、現在西野前監督は63歳。代表監督を退き、今後のキャリアをどのように考えられていますか?

W杯が終わって、現状バーンアウト(燃え尽き症候群)的な感情も確かにある。アンダー世代、オリンピック、トップチームと、すべての代表カテゴリーでチャレンジできたし、Jリーグでも16年指揮を執ってきた。

ただ、四半世紀、監督としてピッチ上に立っている自分が、「全部をやり終えたかもしれない」と思っているのは、ほんの小さな休憩のような気もしている。また燃えるもの、燃やすものを見つけてピッチ上で戦うというタイミングが自ずとやってくるのだろうとも思う。

指導者として選手にいまに安住せず高みを目指せ、ヨーロッパのトップリーグでの挑戦をしろと言ってきた。監督やコーチも同じ意識を持っていなければいけない。チャレンジに、年齢は関係ないと思う。

そういう意味で、将来的に「またチャンスがある」とお伝えしておく。

西野 朗(にしの・あきら)
サッカー日本代表前監督
1955年、埼玉県生まれ。浦和西高校、早稲田大学教育学部卒。アトランタオリンピック代表監督となり、ブラジルに勝利する“マイアミの奇跡”を起こす。その後Jリーグの監督を歴任。1部での監督通算270勝は歴代1位。
(構成=山崎哲朗 撮影=松本昇大 写真=AFLO)
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