※本稿は、「プレジデント」(2018年9月3日号)の掲載記事を再編集したものです。
高齢者は「捨てる」にとても敏感
実家に帰ると、物があふれて足の踏み場もない。そんなケースが後を絶たないという。「親の家の片付け」問題はいまや他人事ではない。
では、どうやって片付けを促したらいいか。5000軒の片付け実績を持つ安東英子氏はこう語る。
「絶対にNGなのは、『捨てよう』というワードです。物を捨てることに敏感になっているお年寄りは非常に多いのです。人によっては『葬式の準備でもするのか?』と、ひねくれて受け取るケースも。『別に片付けなくてもいい』と突っぱねられたらそれですべておしまいです。だからこそ、『掃除してあげようか』くらいから始め、親の手の届かない棚の上などを拭いてあげたりするのがいいでしょう」
親にしたら現状の住まいに何の問題もなく暮らしているわけで、片付けることを強要されるのは「余計なお世話」。事実、切り出し方に失敗したり、よかれと思って勝手に片付けをしたことで親子関係が決裂し、「2度と来るな」と勘当されるケースもあるという。だからこそ、最初のアプローチが肝心だ。
例えば、洗面台下の開き戸の中などは、しゃがまないと奥まで手が届かないため、何年間も放置されている場合がほとんどだ。ならば、「キレイに拭いておくよ」などと中の物を全部出し、あえて中に何が入っているかをすべて見せる。さらに、「この中でよく使う物はどれ? 戻すときに手前に置くようにするよ」などと教えを請う感じで、判断を委ねる。すると、「これはよく使うけど、こっちは古いし使っていないから、もういらないかな」などと片付けが進んでいくのだという。
「そのときに、『無理に捨てなくてもいいんだからね』と一言添えておくと、親も『無理矢理捨てさせられているわけじゃないんだ』と安心するんです。そうやって、少しずつ片付けに対する気持ちを温めていきましょう。絶対やめたほうがいいのは、『これ、いるの?』『これ使ってないでしょ?』などと押し付けるような言い方です」(安東氏)
【記憶力の低下】
ストック品をためてしまう、分別ルールが覚えられない
【視力の衰え】
汚れに気づかない
【味覚の衰え】
食品の腐敗に気づかない
【足腰の筋力の低下】
重い物が持てない。高い戸棚から物が出せない、かがむのがつらく、低い戸棚から物が取り出せない。買い物に行きづらい