実家に自分が昔使っていた荷物をそのまま置いている場合、その荷物から片付け始めるのもいい方法だという。「長いこと置きっぱなしにして、悪かったね」などと自分の物の整理から手をつけ、キレイになった状態を何気なくアピールする。部屋が片付くと便利で快適だと気づいてもらえれば、ほかの部屋も掃除しようかなという気持ちになる。

「いくつになっても親は親。子供から尊敬されたいという気持ちがある。これを忘れると必ずもめます。ですから、極力、言い方に気をつけて、親のプライドを傷つけないことが大事です」(同)

災害、貢献、相談がキーワード

「都心に住むお金持ちの高齢者の家であっても、5年前に賞味期限が切れたレトルト食品が大量にストックしてあったりします。70代以上の世代は、戦中・戦後の、物のない時代に育ったので、『物を粗末にできない』という考え方が刷り込まれているのです」

そう話すのは、これまでに2000軒近くの遺品整理をしてきた内藤久氏。遺族の心によりそって片付けをすることを信条にしている内藤氏は、親に無理強いしてまで片付けさせることを勧めていないという。しかしながら、足の踏み場もない状態で親が生活していたら、やはり心配になる。そんなときには「災害」をキーワードにするといいとか。

「近年は東日本大震災など大きな災害が重なったため、高齢者は『備え』に敏感になっています。地震のときに棚の上から物が落ちてきたり、足元が物だらけで転倒してしまった経験から、怖くなって施設に入る決断をされた方もいらっしゃいました」(内藤氏)

高齢者の転倒場所で一番多いのが自宅だと言われている。高齢者の場合、骨折すると、そのまま寝たきりになってしまうケースも多い。だからこそ、特に玄関までの床の上を片付けておきたい。その場合は「転倒したら危ないから、よけておくね」と親を思いやる気持ちを伝えながら始めるといいそうだ。

▼実家を片付けない「5つのリスク」
【1】ゴミがたまると処分に「多額のお金」がかかる
【2】老親が「ケガ」をして寝たきりになる
【3】「不衛生な家」だと、嫁や孫が寄り付かなくなる
【4】「身内のけんか」が増える
【5】通帳や印鑑がゴミに埋もれ、「紛失」しやすくなる

ただでさえ夫の実家には行きたがらない妻が、汚ければ余計に嫌がる。人が寄り付かない家では、近所や兄弟間でももめ事が多くなる。