新就活方式になったら初任給が一律ではなくなる
中西会長の考え方に賛同する企業や経営者は少なくない。とくに米シリコンバレーのように、離職や転職が激しく、学生でも3~4年のインターン経験者しか採らない風土を経験した人は、日本的な新卒一括採用に違和感を覚えやすい。安倍晋三首相を議長とする「未来投資会議」でも「新卒一括採用の見直し」が議論されることになっている。
仮に日本で新卒一括採用を廃止され、専門性重視のジョブ型採用に変わったらどうなるのだろうか。
まず、初任給が一律ではなくなる。大卒総合職は一律で20万円程度という企業が多いが、能力・スキルの評価で大きく変わることになる。
日本企業でも通年採用を実施しているITベンチャーの採用担当者はこう語る。
「技術系の学生に関してはスキルをチェックしますが、基本的には初年度の年収は500万円をベースにして、400万円台もいれば600万円台の人もいます。ただし、それに見合う成果を出せるかわかりませんし、2年目で成果を出さないと下がります。入社5年目になると、一番下の年収と上の年収で3倍ぐらいの差がつくこともあります」
日本企業だけではない。中国の通信機器大手のファーウエイが2018年春入社の新卒を対象に大卒40万1000円、修士卒43万円の初任給で募集したことが大きな話題となった。ただし、募集したのは、通信ネットワークエンジニア、端末テストエンジニアといった職種スキルの持ち主だ。
また、グーグルも新卒を採用し、能力によって高額の初任給を払っているが、筆者の取材に対し人事担当者は「当社の採用基準はポテンシャルではなく、専門性を重視した即戦力人材です」と説明していた。
賃金制度も日本式の年功序列ではなくなる可能性
スキル・能力によって初任給が違うということは、賃金制度も日本式の年功序列ではなくなるということだろう。前出のITベンチャーのように職務内容と成果で給与が増減する仕組みに変わらざるを得なくなる。
また、新卒一括採用がなくなれば「新卒」にこだわる必要もなくなる。サービス業の人事部長はこう指摘する。
「会社が欲しい学生であれば、大学1年生の早い段階でインターンとして入社させる企業も出るし、中退して入ってくる人もいるかもしれない。どうしても欲しい学生は卒業していなくても採る現象も起きるかもしれません」
新卒で年収500万円や企業から早期に誘いをかけられるのは、能力・スキルを備えたごく一部の人である。多くの学生は即戦力に近いスキルを身につけているわけではない。それは学生の責任でもない。そもそも日本の大学が会社の仕事にスムーズに移行できるスキルを教えていないからだ。