就職できない学生&失職する大学教員が大量に出る

もし、今の状態で新卒一括採用を廃止すれば、副作用として就職できない学生が大量に発生するだろう。

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新卒一括採用の魅力は、大学を卒業すればほとんどの人が就職できるという点にある。ジョブ型採用になれば、卒業後に何らかのスキルを身につけなければ職にありつけなくなる。

じつは経団連の中西会長もそれに関してこう発言している。

「今後の議論において重要なことは、大学の教育の質を高めることである。学生の学修時間が世界的に見て不十分との認識をもっており、未来投資会議ではそうした大学教育に関する本質的な議論をしたい」(記者会見発言要旨)

大学教育の質の中身は定かではないが、本当に欧米のようにジョブ型採用に移行するには、多くの大学が企業の求めるスキルと能力を備えた人材を養成する“職業専門大学”に変わることである。

そうなると、もう1つの副作用として、職業専門教育と無関係な大学の教員が大量に失職することになる。新卒一括採用の廃止を一気に推進すれば、就職できない学生と職を失った大学教員があふれかえる事態になりかねない。

経団連加盟の大企業の「言行不一致」

そもそも新卒一括採用や日本的雇用のあり方を就活ルールの廃止と結びつけて考えるべきではない。

就活ルールの廃止を宣言した経団連加盟の大企業は今でも人材の定着率が高く、実質的に長期雇用を維持している。採用段階においても内部育成を前提に採用し、年功賃金による日本的雇用制度を堅持している企業が大半だ。

しかも、大企業の離職率が低いこともあり、日本の労働(転職)市場はアメリカに比べて脆弱であり、流動性も低い。新卒一括採用ではなく、ジョブ型採用に転換するのであれば、労働市場の活性化が必要だ。今の状態で採用形式だけ変えれば、就職できない学生が増えるだけだろう。

社員の転職も少なく、長期雇用を残している企業の経営者が、入り口の採用についてルール廃止や新卒一括採用の見直しを提唱するのは矛盾しているのではないか。

本当に新卒一括採用やそれをベースとする日本的雇用慣行に不満があるのであれば、まずは出身企業の改革に取り組むのが筋というものだろう。

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