今年7月、ある株式取引システムを開発した米ゴールドマン・サックスの元社員が、プログラム流出の容疑でFBIに逮捕された。

その“ある株式取引”がハイ・フリクエンシー・トレード(以下、HFT)だ。直訳すれば「高頻度取引」。高速かつ大容量のトレードを行うことができるコンピュータプログラムによって市場の動きを読み、利益を得る取引のことである。1回ごとの利益は少額でもボリューム次第で確実に莫大な利益を得られることが特長だ。

一部の大手金融機関はコンマ数秒の間に取引情報を分析して自動的に取引を行うHFTのプラットフォームを開発、自己勘定で巨額の利益を上げたとされる。逆に言うと、HFTの恩恵を享受できるのは、大手機関投資家に限られ、市場の公平性が問われていた。

そんな中、問題となったのが米ナスダックなどの取引所で行われてきた「フラッシュ・オーダー」という取引だ。ヘッジファンド等が、手数料を支払えば取引所が一般公開する0.03秒前に証券会社からの注文内容を見られるという“合法的なフライング”。通常なら問題とならない時差だが、高度なプログラムを持つプレーヤーなら十分利益を上げられる時差なのである。

証券取引委員会(SEC)は8月、フラッシュ・オーダーの禁止を検討すると明らかにした。たしかに公平性の観点から考えれば大企業が有利になるHFTも放っておくわけにはいくまい。とはいえ、こうした開発競争は今に始まったことではなく、流れは止められないだろう。