9月28日、「予算編成の在り方検討委員会」で複数年度予算が議論された。複数年度予算9月、国家戦略担当相の菅直人氏が「複数年度予算」の導入を公言して話題となった。複数年度予算とは、中期的な財政運営のフレームワークで、現在の単年度予算という法的な拘束力を維持しつつ、複数年度にわたり歳出総額をコントロールする予算システム。一般企業でいえば中期経営計画のようなものだと考えればよい。

複数年度予算の最大のメリットは、無駄な歳出を減らせることだ。単年度予算では、年度末に予算をむりやり消化することになりやすいが、複数年度であれば残った予算は次年度に回せる。また、今までは省による予算の分捕り合戦が行われてきたが、省ごとに歳出枠の上限ができるため、各省が自ら財源を見つけるか、省内の他の予算を削る努力をするようになる。

複数年度予算は、すでにさまざまな国で導入されている。特に英国やスウェーデンなど、歳出に占める福祉関連費用の割合が高い国において、積極的に導入された。とはいえ、制度運用に失敗した例も少なくない。一橋大学経済研究所の田中秀明氏は、成功の秘訣として「歳出総額を内閣の強いトップダウンで決めることと、成長率を楽観的に見積もらないことが必須」と話す。

前者は、内閣がどの省の施策を優先するのかを明確にして予算を決めなければ、無意味なものになってしまうこと。後者では、1960年代の英国や西ドイツで、成長率を楽観的に考えて税収を過大に見積もり、かえって歳出が増加したという例がある。できれば高い成長率をアピールしたい内閣にとって、この制度は諸刃の剣なのだ。