アナログディスプレイはブランド価値を高める販促物
ただ、手書きのPOPはタワーレコードの魅力でもあり、楽しみにする客も多い。タワーレコードに「新しい発見」を求めてやってくるディープな客に応える販促物は必要だ。
要は「メリハリだ」と高木は言う。
「都心の大型点はそのエリアのメッカとしての役割を担っています。ここでは我々は掘りさげて提案してくことが必要ですが、小規模な店の場合、それをやりすぎると、入り口に立っている人たちを拒むことになってしまう。バランスがいるんですよ」
78あるタワーレコードの店舗のうち、半数がショッピングセンターへの出店だ。都心の大型店は10店あり、その代表が渋谷店。1500坪の売り場面積に70万枚もの新譜・旧譜を揃える渋谷店は、タワーレコードのシンボルともいえる店で、客も相当に音楽に詳しい。時にはスタッフを上回るマニアも来る。だから、音楽への愛情に満ちあふれたPOPはこの店にはふさわしい。
だが、170坪程度の地方の郊外ショッピングモールへの店ではどうか。都心の店ほどの効果は出ず、売り場から浮いてしまうかもしれない。
また、都心の大型店とひと口に言っても、クラシックが強い店、ジャズが強い店とそれぞれにカラーがある。名古屋のパッセ内の店は、109のようなファッションの店がずらりと並ぶフロアを通ることなく、外からいきなりタワーレコードにたどりつける構造のため、ビル全体としてみれば客の圧倒的多数が若い世代なのに、クラシックに非常に強い。
立地、規模、店舗の作りによっても、店から客にアピールすべき内容や量は異なるのだ。そこで売り上げを伸ばすには、自店に来るのはどんな客なのか、何を求めてくるのかと想像力を全開にするしかない。
「小売業は、モノを売る商売だが、売る側は全員消費者でもある。消費者としての毎日の買い物経験が生かせるのが小売業なんですよ。だったら想像力を働かせないと」