これからは人生100年時代。老後の備えに不安をもつ人もいるでしょう。しかし「夫婦共働き世帯」であれば、それほど心配はしなくてもいいようです。『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)を上梓したファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは「仕事と家事・育児の両立は大変ですが、定年まで夫婦とも正社員として働き通すと、約1億円の“ご褒美”がもらえる」といいます。どういうことなのでしょうか――。

なぜ正社員の共働きは約1億円の“ご褒美”がもらえるのか?

「あなたとお金の生存戦略」をテーマに、新しいお金とのつきあい方を考える本連載、今回のテーマは「共働き」です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/gyro)

共働き夫婦と片働き世帯(専業主婦と会社員)。内閣府の「男女共同参画白書(2018年版)」によると、1980年に専業主婦のいる世帯が1114万だったのに対して共働き世帯は614万。ところが、2017年には専業主婦のいる世帯は641万で、共働き世帯は1188万。この短期間に完全に逆転し、共働き世帯は片働き世帯の2倍近くにもなっているのです。

なぜ、共働き夫婦が増えているでしょうか。

最大の理由は収入源が2つになることで、日々の家計に余裕が生まれるからでしょう。そしてその余裕は「現在」だけではありません。「老後」にも引き継がれる可能性が高いのです。

夫婦とも正社員なら、貯めるヒマがなくても老後の安心を確保

30代~50代夫婦では、持ち家に住み、子育てをしている世帯も多いでしょう。分譲マンションや戸建てを購入した住宅ローンの返済は最長35年間続きます。住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」(2017年度)によれば、約半数の家庭は住宅ローンの返済額が家計の20%以上を占めています。

また、習い事や塾、学費などの子育て費用もバカになりません。日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2017年度)によれば、子ども1人、高校から大学までの7年間に必要な入学・在学費用は平均で935.3万円です。

家計は逼迫し、「定年退職まで老後の準備などしている場合ではない」という家庭も多いでしょう。しかし、「正社員の共働き」の世帯に限っては、出費が激しい子育て時期でも、老後に向けて「1億円」が準備できているも同然なのです。

その秘密は「ダブル退職金+ダブル厚生年金」にある

いったい、どういうことでしょうか。その理由は、「正社員の共働き」の夫婦は、定年時に「ダブル退職金」をもらい、老後は「ダブル厚生年金」をもらえるからです。

正社員の多くは会社から退職金をもらいます。これまで片働き世帯が多かった時代は「1人分の退職金」を夫婦の老後資金の足しにしていました。でも、これがダブル退職金で「2人分」となれば老後資金に大きなゆとりが生まれます。

退職金は会社ごとに水準が異なり、また女性の場合、産休・育休期間中に退職金の上積みを受けられないため、受取額は男性より少なくなりがちです。それでも、夫婦2人分であれば1500~3000万円以上になることが期待できます。これが「ダブル退職金」です。

続いて、「ダブル年金」です。従来、国が公的年金支給のモデルとする世帯は「専業主婦の妻+会社員の夫」でした。これはつまり「国民年金2人分+厚生年金1人分」ということです。このモデルは今でも厚生労働省のホームページに示されており、平均支給額は月22.1万円程度となっています。