ドイツでは全企業の45%が導入

重要なのは労働組合との関係性であるが、ドイツでは労働組合が労働者利益代表の中心に位置づけられており、労働組合がワークスカウンシルよりも優位に位置づけられている。具体的には、賃金等の重要な労働条件については、労働協約が決めたことを否定しない範囲でのみ、事業所レベルの労働条件を決めることができる。ワークスカウンシルと使用者が合意しても、事業所独自の賃金水準として企業ベースで決めた賃金を上回ることはできないということである。

ここで説明を加えれば、ドイツでは労働組合が産業別に組織されており、賃金は職種別・技能別に企業横断的に決められ、それをベースに業績の良い企業は賃金の上乗せを行う仕組みになっている。ワークスカウンシルはその企業ベースで決められた賃金に従う必要がある、という意味合いである。そのほか、ワークスカウンシルが選定される段階で、労働組合に選挙手続きを主導する権限が付与されている。ワークスカウンシルの委員を務めている労働者は、実際にはその大多数が産別労働組合の組合員であって、機能的には企業内組合支部のような役割を果たしている。

そうしたワークスカウンシルの設置は任意であり、すべての企業が導入しているわけではないが、組合組織率が低下傾向にあるなかで、コンスタントに一定割合(2009年時点で約45%)の企業が導入している。これは、その設置目的が、企業と労働者が協力して企業の発展を追求することになっているため、使用者も利点を認めているからである。

一方、労働組合は、自らの優位性が確保されているため、組合活動の阻害要因になっているとの声はない。むしろ、ワークスカウンシルを組合活動のPRに活用しているほか、コンサルテーションをすることでその存在感を高めている面があるようだ。

以上がワークスカウンシルの概要であるが、具体的な活動で興味深いのは、事業所レベルの人員削減に際して果たす役割である。前回みた通り、ドイツでは不採算事業の整理に伴う人員削減の必要性そのものには、合理性があれば組合は反対しない。しかし、その際、ワークスカウンシルが再就職支援や退職金、家族のための支援等について取り決めを行う役割を担っている。

ワークスカウンシルは使用者側のオファーを拒否できるため、使用者はきちんとした対応を行う。こうしてドイツでは、不採算事業を放置することなく、労使で協力して経済合理性と十分な生活保障の同時実現を追求しているのである。