また、大学に進学した場合も、6週間から6カ月程度のインターンシップにいくつか参加してから、就職するのが一般的である。通常の従業員と同様の仕事をするケースもあり、学校卒業後に採用される段階では、一定の基礎的な実務能力が身についている。学生にとって、インターンシップは正社員として企業に採用されるチャンスにつながるものであり、当然モチベーション高く実務に従事して、さまざまな技能や知識を身につける。

そのほか、ドイツには専門大学という仕組みもある。これは師範学校をはじめとする上級専門学校を前身とし、実務重視を特徴とする(※2)。基本的に「実習セメスター」と総称できる実務訓練を導入しており、具体的には、企業などでのインターンシップを6カ月単位で実施する。

教員は、産業界や労働市場の動向に機敏に反応して専門教育分野を修正していく必要があることから、いわゆる准教授や助手といった教員スタッフは基本的には置かず、専任の教員は教授が大半を占め、外部からの委託教員の方が人数的には多くなっている。採用要件として、博士号の取得とともに「5年間の実務経験」が求められ、実務重視の教育方針が反映された形になっている。

このように、ドイツの場合、学生の間にさまざまに企業での実習を経験し、実務能力を身に着ける仕組みが存在する。この結果、正規労働者に採用された段階で、若手は実務的に一定の基礎的な職業能力が身についている状況にあるわけだ。

この点、わが国の仕事と教育が混然一体となり、長時間労働の過程で人材育成をしてきた状況とは大きく異なる。したがって、わが国で本気で労働時間を短縮するには、教育・人材育成の仕組みを見直さなければ、人が十分に育たず、将来に禍根を残すことになる。

(※1)本多千波(2011)「ドイツの職業教育訓練と教員・指導員の養成」雇用・能力開発機構『諸外国における職業教育訓練を担う教員・指導員の養成に関する研究』第4章、128-131頁。
(※2)寺澤幸恭(2005)「ドイツにおける「実務型」高等教育に関する考察(2)」『岐阜聖徳学園大学短期大学部紀要』

欧州では事業上の理由による人員削減は合理的

不採算事業部門の余剰人員の取り扱いが日欧で異なることも重要である。欧州諸国では一般に、事業上の理由による人員削減は合理的とされる。とりわけドイツやスウェーデンなどの北部の国々において、雇用調整は比較的容易に行われる。

なぜかといえば、わが国の正社員の雇用契約は、具体的な職種や職務を決めずにいわば会社の一員になる形だが、欧州では職種や職務を決めて働くため、その職種や職務が無くなれば雇用契約は解消されるという理屈になるからだ。例えばドイツでは、わが国で整理解雇の要件の一つとされる事業上の必要性に司法が介入する(必要性を司法が判断する)ことは原則なく、解雇回避努力に関しても相対的に緩めとされる(※3)