犯罪者には「GPSチップ」を埋め込んで、監視すべきか

進化心理学に詳しい橘玲は、犯罪でもサイコパスといわれるような人間たちは遺伝率が極端に高いというエビデンスがあるという。

子どものDNAを採取して、犯罪を起こす率の高い人間をずっとフォローしていくプレクライム(犯罪の前)を、欧米でテロ対策のために導入しているところもすでにあるそうだ。

いわゆるビッグデータで、メールやSNSなどの情報をAIに解析させ、危険度の高い人物を割り出すのだという。

さらにイギリスでは、犯罪を起こす可能性の高い人間には、犯罪を犯さなくても行政の命令で先進医療施設に収監できるという法律が通っている。

その理由は、安全に対する要求がものすごく高くなっているからで、一番の理由は少子化だと思うと橘はいう。1人しかいなかったら、あらゆるリスクをすべて排除して、この子を育てたいと思うから、幼児性愛者や犯罪を起こす可能性が高い人間が近くにいるなんて許せない。チップを埋め込んでどこにいるか全部わかるようにしろと、世の中の流れがそうなってきていると思うと話してくれた。

新潟市西区で小2女児が殺害された事件を受けて、新潟県議会が性犯罪常習者に衛星利用測位システム(GPS)端末を装着させる監視システムの導入の検討を求める意見書を出しているが、こうした動きはますます大きくなるのだろう。

自由よりも安全を選ぶ。共謀罪を強引に押し通した安倍政権に対して、反対の声をあげる日本人がそう多くなかったことでもそれはわかる。

監視カメラが日本中を覆い尽くしても、凶悪犯罪はなくならない

2002年に新宿歌舞伎町に監視カメラ50台が設置された。その時はプライバシー保護を理由に反対の声が上がった。しかし、防犯カメラと呼び名を変えさせられ、今や犯罪捜査には欠かせないものになり、プライバシーよりも安全が優先されることに誰も疑問を抱かなくなってしまった。

しかし、監視カメラが日本中を覆い尽くしても、凶悪犯罪はなくなることはない。

話が横道に入り込んでしまった。再犯をどう減らすかだが、刑期を終えた人間を社会がどう受け入れるかを考えない限り、娑婆に出て仕事もない人間に選択肢はほとんどないはずだ。無法者になるか、再び犯罪に手を染めるかである。

口当たりのいい無責任ないい方だとはわかってはいるが、再犯を防ぐにはリスクを含めて、彼らを社会全体で見守る以外にない。

根本的なところを変えないで、すべてお上頼りで、自由もプライバシーも渡していいはずはない。斎藤貴男は『安心のファシズム』(岩波新書)のあとがきにこう書いている。

「独裁者の強権政治だけではファシズムは成立しない。自由の放擲と隷従を積極的に求める民衆の心性ゆえに、それは命脈を保つのだ。不安や怯え、贖罪意識その他諸々――大部分は巧みに誘導された結果だが――が、より強大な権力と巨大なテクノロジーと利便性に支配される安心を欲し、これ以上のファシズムを招けば、私たちはやがて、確実に裏切られよう」(文中敬称略)

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