大手メディアは逮捕は報じたが、綾瀬の犯人とは触れず

当時16歳だった弟、湊伸治(45)は、出所後都内にあるムエタイジムに通っていたが、「徐々に自分の過去がジムの仲間にバレていき、居づらくなってフェイドアウトしたようです」(ジムの経営者)

湊が埼玉県・川口市内のアパートへ引っ越してきたのは今年6月。管理会社に対しては、ネット販売をやっていると告げ、同年配の女性と暮らしていたという。

そして8月19日、アパート前の駐車場で、同じアパートに住む32歳の会社員を突然、警棒で殴り、首をナイフで刺して「殺人未遂容疑」で逮捕された。

大手メディアは、湊の逮捕は報じたが、綾瀬の事件の犯人だったことには触れていない。

『新潮』は、識者たちに意見を聞きながら、メディアが少年法の規定を厳格に解釈して過去の事件に触れないのでは、なぜ同様の犯罪が繰り返されてしまったのかを検証することもできない。更生を第一におく少年法の「敗北」ではないかと指弾している。

この事件の前年にも、名古屋で成年1人と未成年者5人によるアベック殺人事件が起きている。

ドライブに来た男女のクルマを襲撃して、男性には殴る蹴るの暴行を加え、女性は輪姦して陰部にシンナーをかけ火をつけた。

放置すれば厄介なことになると、男性の首にロープを巻き付け両側から引っ張って殺すという残虐なやり方を知った時、怒りと恐怖に身体が震えた記憶がある。

少年院と刑務所では「矯正教育」の内容が違う

こうした凶悪事件を起こした元少年たちを少年法で更生させることができるのだろうか。

私は現在の少年法には懐疑的だが、事件当時、東京鑑別所で法務教官として在籍し、現在はジャーナリストとして活躍している草薙厚子に聞いてみた。

犯人の少年たちの中には、16歳未満の少年もいたが、全員検察官送致になっている。いかに極悪非道な事件だったかがわかるとしながら、4人が少年法で裁かれていたら、もう少し違っていたのではないかという。

「刑務所に服役していても、少年に変わりはないから、教科教育や生活指導を行っていたようですが、刑務所内の教育担当者は、彼らに対して矯正教育は不可能だと思っていたようです。少年院は鑑別所同様、職員が教育などの専門家(専門の国家公務員試験の合格者)ですから、手厚い矯正教育を施すので、人によってではありますが、ある程度再犯防止に役立っていると思います」

少年院では法務教官などの専門家が担当するので、その少年にあった手厚い矯正教育ができるが、刑務所では難しいというのである。

だが、再犯を犯したということは贖罪意識が芽生えなかったからで、被害者遺族がどんなに嘆き悲しんでいるかに気づき、自分の罪の重さに気づいていれば、再犯は起こさないが、彼らのような凶悪犯を矯正するのはかなり難しいともいう。

少年法の精神は尊重するが、再び罪を犯すことなく、出所後生きていくようにするには、もっと根本的に考えるべきことがあるということだ。