週末の「寝だめ」で調整すると、リズムが乱れてしまう

とはいえ、多忙なビジネスマンにとって、必要な睡眠時間を毎日確保するのは難しいことでしょう。このような場合、週末に「寝だめ」をして調整をしようと考える人が多いようですが、それでは確実に睡眠のリズムが乱れてしまいます。

そこで覚えていただきたいのが、平日の睡眠時間の借金、いわゆる「睡眠負債」を1週間単位で調整していくという方法です。

眠れなかった時間を1日にまとめて返すのではなく、何日かに分けて、少しずつ返すことでリズムの乱れを軌道修正しやすくなるのです。そのためには、平日の週1日、アポイントを入れない暇な日をつくるのもよいでしょう。その日は早く帰って、ちゃんと寝る。忙しい1週間にふと休める日が1日あるだけで、精神的にも安定します。

次に、どうすれば深く眠ることができるかを考えてみましょう。1つの方法として、帰路の駅内ではエスカレーターではなく、階段を使うことをおすすめします。

これは体温の緩やかな落差をつくるための働きかけの一環です。朝起きた人間の体は夕方にかけて自然と体温が高くなり、交感神経(緊張しているときに働く神経)が優位になります。夕方以降、体温は次第に下がっていき、副交感神経(リラックスしているときに優位になる神経)が活性化します。この体温の落差が眠気を催し、スムーズな入眠に導くのです。

ほかにも日々の生活のなかで、睡眠の質を高めるための方法を挙げました。ぜひ実践してみてください。

自分でできる睡眠マネジメントはこれだ!
スッキリした朝につながる! 夕方~朝の実践パターンは

夕方
・パソコン用メガネをかけてブルーライトをカット
・仮眠は15時まで、20分だけにする
・電車の中では絶対に眠らない
・帰りはエスカレーターより階段を優先
・帰り道での飲酒は就寝3時間前までにする

・残業する場合は20時までに夕食を摂る
・帰宅後はベッド以外のところでうたた寝しない
・寝室でテレビは見ず、1度目を通した本や雑誌を読む
・寝室でスマートフォンはなるべく触らない
・仕事のことが頭に浮かんだら、手書きメモでアウトプット

・カーテンを開けて日光が射し込むようにしておく
・スマホなどのアラーム設定は2度まで
・熱めのシャワーを浴びて一発で目を覚ます
・週末だからといって2時間以上睡眠時間を上乗せしない
・早起きを最低3日続けて体内時計を調整する
白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長
筑波大学医学群医学類卒業。著書に『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』など。
 
(構成=百瀬 崇 撮影=小原孝博 写真=iStock.com)
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