1月で行列店!料理ありきの“拙速”出店
そんな赤塚は部下にどんなことを求め、期待しているのだろうか。極めて漠然とした設問だが、赤塚は「頭でいろいろ考えるよりも感性のいい社員のほうが望ましいですね」と話す。
たとえば、どこに行っても人が多く入っている店や、行列ができている店には誰しも気付く。だが、それはあくまでも表面だけのことだ。
「マーケティングデータも見ないわけではありませんが、それだけに頼っていたら他社と同じことしかできません。行列ができたり混んだりしていても、業績がいいかどうかはわからない。そういうことまで見抜けるかどうかが大切だし、部下にも見方を教えてきたつもりです」と赤塚は話す。
たとえば、現在同社の外食部門で繁盛している業態に「三尺三寸箸」がある。ある日の昼下がり、日比谷シャンテの地下にある同店を覗くと200席を超える大型店にもかかわらず、長蛇の列。入り口の女性に待ち時間を聞くと「30分くらいです」との返事。後の予定があったので断念せざるをえなかった。
三尺三寸箸は野菜を目玉にして健康に配慮したビュッフェスタイルの店。
「焼き肉や寿司などで過去に流行った業態でしたが、味の点と“健康志向”という時代の流れに乗り遅れていた。そのあたりを修正すればいける、と判断したわけです」と赤塚は振り返る。
驚くべきはこの業態開発に1月もかかっていない点だ。これに限らず同社では、ひとたび方向性が定まれば、料理の試作を繰り返しながらコンセプトを固め、百貨店、内装会社を巻き込んで一気呵成に店をつくり上げてしまう。
その“拙速さ”ゆえにたまには間違えることもある。ただ出店したものの、初速が伸びない場合には見切りも早い。「3日も見れば、売れない店はわかります」と、すぐさま退店の決断を下す。
同じように開発し、現在では同社の基幹部門に育ちつつある和菓子部門は口福堂の名でショッピングセンターを中心に展開している。何と1個130円の“おはぎ”を1000個、2000個と売る店が存在し、過去には「ある百貨店で1日100万円売ったこともある」のだとか。
赤塚は言う。
「おいしいものは飽きがきません。130円のおはぎにも最高の小豆を使います。原価率は高くなりますが、数を売れば採算は合うようになるのです。
おはぎが大人気なので、あるショッピングセンターさんから“大福”もできるはずだからやってくれ、と頼まれています。柿安が作ったらおいしいはずと思ってくださっているようです」
こういう話が舞い込んだときに「どこの大福が日本一旨いのかを即座に調べ、素材を探し、それを凌駕する柿安の日本一の大福」を作れるような社員こそが、赤塚の眼鏡に適うのである。