柿安の積極展開支える400人もの調理人たち
経営トップは孤独なものである。であるがゆえにワガママにもなる。トップが何を求めているかを知り、それに応えることが会社を成長させ、自分の会社での将来を切り開く道であることはいうまでもない。だが、トップがマスコミの取材に応じ本音を漏らすことなどまず、ありえない。おそらく部下である社員に「手の内を見せたくない」と考えるためであろう。
柿安本店は桑名で明治時代に創業された老舗。赤塚保会長は5代目の社長であったが、昨年12月に長男の保正に社長を譲ったばかりだ。見かけは温厚そうだが、何か事があれば厳しそうな雰囲気を漂わせている。
同社は“牛肉のしぐれ煮”で一世を風靡した会社であり、現在は精肉、惣菜、菓子の売り場を百貨店、ショッピングセンターなどに展開するほか、外食部門を持っている。4部門で抱える調理人はざっと400人。
「良い素材を使ったおいしいものをお値打ちの価格で提供していきたい、というのが創業(明治4〈1871〉年)以来の社是です。社是の範疇でいろいろ創意工夫してもらいたい」
赤塚は三代目社長・二三雄の二男として生まれ、兄の安則(4代目の社長)に、「明日から、おまえが社長をやれ」と突然言われ社長に就任した。2001年4月のことである。