ブラックバイトを辞められない学生側の「懐事情」

そもそも労働法などのワークルールを知らない学生も多い。バイトを通じて会社という組織に初めて接し、何が正しくて、間違っているのかという免疫を持たない学生も多いだろう。そして学生たちはこうしたバイトの経験を経て就活に直面する。キャリアセンターの職員は「バイトの経験が多分に就職先選びに影響している」と指摘する。

「電通事件やメディアの影響もあるかもしれませんが、ブラックバイトを通じてこんな仕事や生活は二度としたくないと思う学生が多いのです。バイト先でいじめられている社員を見て、こんな会社には絶対に入りたくないと思ってしまう。賃金未払いやパワハラが日常的に横行している会社はそんなにたくさんあるわけではありませんが、学生はそうした場面に遭遇し、それだけで会社とはこんなものだと萎縮してしまう。辛い体験でも学生時代の1~2年程度だからがまんできますが、一生そうだとしたら嫌だという思いがあるので就職先選びでは職場環境など気にするのだと思います」

「ブラックバイト」での辛い経験が、就職先に過度の期待を抱かない原因になっているかもしれない。

▼「出世なんかどうでもよい」という諦念を抱く理由はバイトにあり

先の日本生産性本部の調査によると「どのポストまで昇進したいか」という質問に対し「どうでもよい」と回答した人が最も多く(17.4%)、昨年度まで1位だった「専門職<スペシャリスト>」は16.5%と2位に転落した。せっかく入社した会社でも「出世なんかどうでもよい」という諦念を抱く理由の一端はバイトにあるのかもしれない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/BongkarnThanyakij)

バイトなのだから嫌なら辞めればいいと思うかもしれないが、学生側にも簡単には辞められない事情がある。全国大学生協連の「第53回学生生活実態調査の概要報告」(2018年2月26日)によると、下宿生の仕送り金額について「10万円以上」は年々減少し、2017年は30.7%。「5~10万円」が37.2%。仕送り5万円未満が15.5%、0円が7.1%も存在する。半年間の下宿生のアルバイト就労率は77.3%を占め、生活費のアルバイト代は2年連続で増加している。

親からの仕送りが減少し、アルバイトは学業を存続するための不可欠の収入源となっている。そのバイト先がブラック企業であれば、学業に支障を来すだけではなく、就活選びにも大きな影響を与えることにもなりかねないのだ。

(写真=iStock.com)
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