大学生のブラックバイト経験率は6割に達する
これらの調査を見て「最近の若者は……」などと小言を漏らす人がいるかもしれない。しかし、ワークライフバランスを重視したり、プライベートを優先したりする傾向は、若者自身の変質というより、取り巻く社会環境の変化も影響しているだろう。
電通やNHKといった大企業での過労死が大きく報じられ、政府自らが「働き方改革」を推進している。こうした状況は以前には考えられなかった。
さらに別の要因もある。地方国立大学のキャリアセンターの職員は「学生の多くが『ブラックバイト』を経験しているからではないか」と話す。
「キャリア教育の中でワークルールについて講義を行い、課題として自分のバイト先でのトラブルの内容や質問を書いて提出するようにと言い、次の講義に匿名で皆の前出で発表しました。正直言ってブラックバイトをしている学生が多いのに驚きました。『3カ月間給料が支払われないのですが、いつまで働いたらいいですか』『失敗したときに、てめぇ、ぶっ殺すぞと言って物を投げるのですが、どうしたらいいですか』という質問もありました。後で学生になぜ辞めないのと聞くと『私だけではなく社員の人もいじめられているので辞めるわけにはいかない』と言うのです」
厚生労働省の調査(2015年11月)によると、アルバイトを経験した学生の60.5%が労働条件などで何らかのトラブルがあったと回答している。トラブルの中身はシフトに関するもの、賃金の不払い、労働時間が6時間を超えても休憩時間がないといった事例が挙げられている。
▼「急なシフト変更」「1日6時間超でも休憩時間ゼロ」
キャリアセンターの職員によると、「人手不足で代わりがいないと辞めさせないと言われ、2カ月間必死で代わりを探している」という飲食業でバイトをしている男子学生もいたという。学生に辞めることを勧めると「それは無責任です」と答えたそうだ。
京都府などが調査した「学生アルバイトの実態等に関するアンケート調査」(2018年3月19日)によると、トラブルが最も多いのは「一方的に急なシフト変更を命じられた」「1日6時間を超えても休憩時間が与えられなかった」というもの。ベスト10には「準備や片付けの時間の賃金が支払われなかった」「暴力や嫌がらせを受けた」「時間外労働の割増賃金が支払われなかった」が入っている。さらに「退職を申し出ても退職させてもらえなかった」(9.8%)もいる。