人材の流動化が急速に進んでいる。いま企業が考える「生き残れる社員」とは、どんな人材なのか。老後を見据えたとき、50歳時点でどんな働き方をしていればいいのか。サービス、医療、IT関連企業の人事部社員に、匿名で話を聞いた――。

接客、事務が激減、定型業務は自動化

――AI(人工知能)など技術革新により会社の業務はどう変わるのか?

【サービス】うちは外食店舗も運営しているが、すでにお客の注文はセルフサービスになってきており、店員がオーダーを取りにいかない時代がそこまできている。しかもインバウンド向けに多言語で注文できる。今後このシステムが急速に普及すれば接客担当は徐々にロボットに代わり、残るのは料理人だけになるのは間違いない。

写真=iStock.com/YinYang

【医療】うちも事務作業など定型的な業務は自動化システムでどんどんなくなっている。今後は業務の進行や判断など複雑なマネジメント業務だけになり、残りは営業職としてがんばってもらうことになる。その結果、営業も無理だとなると正直言って働いてもらう場所もなくなるだろうね。

【IT】うちは省力化の技術や製品を提供している側なので、今は本当に忙しい。それでもプログラマーや営業担当のSE(システムエンジニア)の業務の効率化の仕組みも進んでいる。長年、定型に近い作業をしているエンジニアの居場所はなくなるだろう。それよりも大変なのは銀行さんだ。これまでも拠点の統廃合をやってきたが、いよいよ人に手をつけるしかないみたいだ。業務を合理化して別の部署に異動させても結局、その部署の人員がダブついてしまう。

【医療】銀行の一番のお客は高齢者だから一挙に店舗を閉じることはしないだろうが、年寄りでも団塊世代以降の世代はスマホで入出金や決済ができるようになる。今後は70歳になって窓口に行く人も減るし、銀行店舗は完全にいらない存在になるかも。

――会社で生き残るためには、どういう能力が求められるか。

【サービス】人をコントロールするなど人間関係のあれこれを解決できる人は重宝されるね。とくにうちの場合はお客様対応係。AIが進化しても人間の対応は大事。逆に高度の専門能力を持つだけ、稼げるだけの人は優秀な人材とは言えない。人に関心を持ち大事にできる、公私混同しない誠実さを持ってしっかりと組織をマネジメントできる人がますます求められてくると思う。