また2017年4月からは、KDDI、東京ハイヤー・タクシー協会と共に、都内を走る500台のタクシーからビッグデータを集めて解析する実証実験を行っています。こちらは2018年春から、トヨタの無料カーナビアプリ「TCスマホナビ」で配信する「レーン別渋滞情報」に活用される予定です。
IT業界ならずとも「データを握った者が勝つ」。次世代自動車産業における戦い方を、トヨタはしっかりおさえています。
テスラがいま量産化で苦しんでいる理由
トヨタ生産方式の競争優位も、次世代自動車産業への移行後も揺らぎそうにありません。スマートファクトリーを標榜していたテスラがいま量産化で苦しんでいることからもわかるように、ハードがまだ「従来のガソリン車の延長」にある限りは、従来型の自動車産業の生産ノウハウ、量産化のテクノロジーがモノを言うからです。
そうなるとトヨタは強い。欧米のビジネススクールでも、オペレーションの授業で必ず取り上げられているのが、「カンバン方式」も含めたトヨタの生産方式です。
ご存じの方が多いかと思いますが、カンバン方式の特徴は徹底的なムダの排除にあります。異常が発生したら機械が止まるために不良品が生産されず、人間1人が何台もの機械を運転できるという「自働化」や、必要なものを必要なだけ必要なとき製造することでムダ、ムリ、ムラをなくそうという「ジャストインタイム」の考え方が象徴的です。カンバン方式の名称は、後工程が前工程に部品を調達しに行く際に、何が使われたかを相手に伝える道具として「カンバン」と呼ばれるカードを使用することに由来します。
トヨタのこうしたオペレーションシステムは「世界最高」と評価されています。だからこそ、世界中でトヨタの生産方式が研究されているのです。いまでは、「カンバン」をはじめとするアンドン、ポカヨケ、ゲンバといったトヨタ式の日本語が、海外でもそのまま用いられるようになっています。
カンバン方式とは「経営モデル」そのもの
しかし、学んだところでその神髄までは、簡単にまねできるものではないのです。なぜなら、「カンバン方式」というのは、単なる在庫調整の手段ではなく、単なる生産方式でもありません。また単なる製販一体方式でも、製造業で言われている開発・製造・販売の一体方式でもありません。むしろ、長年にわたって築き上げてきた「経営モデル」そのものであると見るべきです。
裏を返せば、メーカーにおいては生産管理システムが経営システムに深く結びついている、とも言えます。メーカーでは、製造現場で求められてきた生産管理の手法を、必然的に全社レベルでの経営モデルとして導入しています。生産管理が、経営における各主要機能と深く結びついているためです。ある生産管理システムを本格的に稼働させていくには、全社レベルでの経営モデルとしての導入が不可欠。ならば、次世代自動車産業においても、ふさわしい生産管理の手法を経営レベルまで浸透させなければなりません。