国民が持っている「埋蔵金」
五木寛之●作家
規制強化の流れは大資本の経済活動を制限するだけではなくて、個人個人の経済活動をも縛ってゆくものだということに大衆は案外気づきません。たとえば預金の現在額や出し入れがチェックされる。大きな金額をまとめて引き出すときは用途を尋ねられ、大きな買い物をしたときには資金の出所を厳しくチェックされるというように、やがてさまざまな個人の経済活動が国家の管理システムの下に統合されてゆくこともあるでしょう。
戦後民主主義の中で育った世代は国家権力の怖さを知らない。明治維新では武士階級と禄が廃止されましたが、必要とあれば政府は国民の金を巻き上げることを厭わない。戦後、私たちの世代の大きな記憶は預金封鎖です。農地解放で私有財産制度を否定した後に、預金封鎖も行った。個人の預貯金が凍結され、家族の数に応じて決められた額しか月々下ろせなかったのです。
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(大沢尚芳=撮影)

