襲いかかる大転換期の荒波

<strong>五木寛之</strong>●作家。1932年、福岡県生まれ。生後まもなく朝鮮にわたり戦後引き揚げる。66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門 筑豊編』ほかで吉川英治文学賞を受賞。代表作『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『風に吹かれて』『大河の一滴』『生きるヒント』など。現在、直木賞、泉鏡花文学賞はじめ多くの選考委員をつとめる。
五木寛之●作家。1932年、福岡県生まれ。生後まもなく朝鮮にわたり戦後引き揚げる。66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門 筑豊編』ほかで吉川英治文学賞を受賞。代表作『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『風に吹かれて』『大河の一滴』『生きるヒント』など。現在、直木賞、泉鏡花文学賞はじめ多くの選考委員をつとめる。

今から27年前、夕刊紙「日刊ゲンダイ」連載の「流されゆく日々」というコラムで、日米の自動車産業を考察して、アメリカは国家として自動車産業を見捨てたという内容の「自動車産業論」を書いたことがあります。いま、明日なきアメリカの自動車産業界の惨状を見るにつけ、27年前に感じた予感が蘇ってくる。2008年という時代を振り返れば、行きつ戻りつしながらも、自分が予測してきた通りに時代が動いてきたなという感じがしています。

日本では戦後長く自民党政権が続いてきました。根本的な問題を抱えつつ、絶えず自己修正を繰り返して、あちこち綻びを繕いながらこれまでなんとかやってくることができた。自己修正によって時代や環境に適応して生き永らえるというのはある程度までは可能なのです。