第1志望 大学附属中学に落ちたA君の「その後」

最後にひとつのエピソードを紹介したい。

写真はイメージです(写真=iStock.com/Vik_Y)

中学受験に挑んだA君についての話である。A君は小学3年の後半から私が代表を務める塾に通い始めた。父親の母校である高偏差値の慶應義塾大学の付属中学校へ進学したかったからだ。A君と会話をしていると父親の話がよく登場する。無口で少し怖い印象の父親はちょっと近寄りがたく思っていたようだったが、その口ぶりから父親に憧れている気持ち、誇りに思う気持ちがひしひしと感じられた。

A君の成績は決して悪くなく、慶應義塾大学の付属中学校を「挑戦校」として狙えるレベルだった。しかし、入試結果は第1志望校に不合格。第2志望校であるB中学への進学を決めた。

第1志望校の夢が破れ、彼の落胆ぶりは相当なものだった。ただ、救いは母親がB中学の進学を心から喜び、「B中学は一流の進学校なのだから、がんばれば慶應よりもっと難しい大学に行けるかもしれないわよ」と声をかけていた点だ。

▼高校受験でリベンジしたいという心の裏側

入学して3カ月、少し中学校生活に慣れたA君が塾に立ち寄ってくれた。彼は言った。

「ぼく、いまの学校に通い続けながら、高校受験で慶應の付属高校を目指したいのです」

聞けば、中学受験で第1志望校に不合格であったのがとにかく悔しくてたまらないとのこと。両親はどう考えているのかとたずねると、母親は(高校受験自体を)反対していてB中学で中高生活を謳歌すべきだと言っている。一方、父親は黙して何も語らないらしい。