韓国には、20万人以上の国民が同意した場合、政府要人が方針を検討した上で返答を用意しなければならない「国民請願」という制度がある。今回、「<仮想通貨の規制反対>政府は国民たちにただの一度でも幸せな夢を見せてくれたことがあるか」という辛辣なタイトルの発議案は、その返答ラインをあっさり越えてしまった。

韓国で20万人以上の支持を集めるのは、簡単なことではない。人口比で日本に置き換えるならば、50万人以上が賛同しなければならないことになる。過去に返答ラインを越えた発議案には、「青少年保護法廃止」「中絶罪廃止」など、国民的イシューがめじろ押しだ。いかに仮想通貨への国民的関心が高いか、うかがい知ることができるだろう。

韓国国内の取引金額は世界の約30%を占める

こうした国民の猛反発を受け、規制強化の動きはやや沈静気味になった。1月末からは、「取引口座・アカウントの実名制」が導入されるなど一部規制は実施されているものの、「国内での取引全面禁止」といった“強硬論”を貫こうとする役人の声はあまり聞こえなくなってきた。

韓国は世界でも有数の“仮想通貨大国”である。国際市場に及ぼす影響も大きい。韓国・保険研究院が発行しているレポート「国内仮想通貨取引の特徴と示唆点」によれば、「韓国国内の仮想通貨取引金額は36.1億ドルで、全世界121.4億ドルの約30%を占める」という。そして韓国市場には、仮想通貨界の基軸通貨であるビットコインの取引額が相対的に小さいという特徴がある。「全世界の仮想通貨取引額でビットコインが占める割合は63.4%だが、韓国国内の取引割合は32.7%」(前出レポート)にとどまっている。つまり、暴騰・暴落の幅が大きい「アルトコイン(草コイン)」の取引比率が高く、人々が仮想通貨に一発逆転の夢を抱く傾向が強いと分析できる。