大切なのは会話よりも、所作やふるまい

そもそも、コミュニケーションの方法は会話を交わすことだけではないのです。言葉だけが相手に何かを伝えるのではありません。所作やふるまいからも十分に伝わるものがあります。

ビジネスのシーンに限らず、デートにしてもコミュニティーの場にしても、相手と2人で過ごしているとき、大切なのは会話よりも、むしろ、所作やふるまいです。沈黙があったとしても動じることなく、落ち着いている姿。相手も沈黙を気まずく感じているだろうと推しはかり、やさしいまなざしを送るような気づかい。そうしたことは、どれだけ言葉を重ねるよりも、人柄を伝えるものです。

禅の世界で、言葉では表現できない真理を師から弟子に伝えることを「以心伝心」といいますが、この「以心伝心」は禅に限らず、私たち日本人が自然と身につけているものです。私たち日本人は、言葉を介さずとも、思いを伝えることができます。国際社会では通用しないかもしれませんが、同じ日本の文化、伝統を共有している相手なら、「以心伝心」は有効なコミュニケーション手段になり得るのです。

言葉はなくても心が通い合っているとお互いに感じることができれば、それは強い結びつきになります。まず、言葉なしで相手を理解することを心がけてみましょう。ちょっとしたしぐさや目の動きからも感情は見てとれるものです。

超一流は、沈黙そのものを楽しむ

そして、相手も同じように、あなたを理解しようとしてくれていると考えましょう。お互いが理解しようと考えているのなら、私たち日本人には「以心伝心」という強力なコミュニケーション手段があるのですから、容易に実現できます。

沈黙をしているとき、あなたが気まずいのであれば、相手にはあなたの気まずさが伝わっているのであり、相手も気まずく感じているかもしれません。そのように考えると、沈黙への根本的な対処法は、あなた自身が「気まずくならない」ということになります。

最初のうちは難しいかもしれませんが、沈黙を楽しみましょう。楽しむことができれば、当然、気まずく感じることはありません。

どこにでもいる「いい人」は、沈黙に耐え切れず、沈黙につぶされます。反対に人生を謳歌する「超一流」は、沈黙そのものを楽しむのです。沈黙を自在に操って、ビジネスを、そして人生を、成功させましょう。

潮凪 洋介(しおなぎ・ようすけ)
エッセイスト・講演家
早稲田大学社会科学部卒業。主な著書に、『もう「いい人」になるのはやめなさい!』『それでも「いい人」を続けますか?』(ともにKADOKAWA)、『「バカになれる男」の魅力』(三笠書房)、『「男の色気」のつくり方』(あさ出版)などがある。
(写真=iStock.com)
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